FC2ブログ
RSS

赤瑪瑙奇譚 第九章――3



 コクウの婚礼は、 日の入り とともに始まるのが慣例になっていた。
 今回ばかりは 早めに始めたかったのだが、 そうも行かず、 少しだけ早められるにとどまった。


 大広間に続く 控えの小部屋に、 支度を終えたユキアがいた。

 年若い花嫁らしく、 髪は 清楚にまとめられ、 細い金の冠を載せていた。
 きらびやかな冠の中央には、 額にかかるあたりに 大粒の金剛石が輝いている。
 『マホロバの星』 と名づけられた 名高い石である。

 豪華な上掛けには、 地色の白に溶け込みそうな 淡い色の糸で 華やかな刺繍が施されており、
 長めの重たげな裳裾(もすそ)が 緩やかな襞を作って 流れていた。

 左腕には 銀の腕輪が、 帯には いつものように 金の鎖が下がっていたが、
 もちろん、 その先には 赤瑪瑙が付いていて、 帯の中に 挟み込まれている。
 ウガヤが、 この者は大丈夫だから と付けてくれた女官が、 支度を手伝ってくれていた。

 大広間の様子を 覗きに出ていたメドリが、 部屋に 戻ってきた。
「皆様、 ほぼ おそろいのようです。
 モクドからは 皇太子ご夫妻がお見えのようですけど、
 マサゴから いらしている方は どなたなのですか」

 女官が答えてくれた。
「トコヨベ王の弟君 アユチ様です。 ご一緒にいらっしゃるのは、 ご子息様。
 噂では 兄君の陛下よりも 数段上のやり手 でいらっしゃるとか」
 聞いていたユキアの顔に、 わずかな緊張が走る。
 が、 メドリは のんきに続けた。

「そうなんですか。 見た目も ご立派なご様子ですよね。
 ところで、 太政大臣はじめ、 大臣(おとど)の方々の奥様は 体格の良い方が多いのですね」

 それを聞いた女官が、 くすくすと笑いながら言った。
「奥様方は 危険なので、 身代わりの者だと思います。
 多分 女装した兵士 が多いのではないかと」

「おやまあ、 でも、 それに比べて モクドの皇太子妃は、 本当に たおやかでお美しい。
 何か起こっても 大丈夫なのでしょうか」
「あら、 モクドの妃殿下も、 確か 近衛兵が 身代わりをなさっていたと思いますよ。
 近衛隊随一の 剣の使い手だとか」

「うそーっ!  私 負けてます。 もう一度 見に行ってみようかしら」
「……………………それは、 ちょっと……」

 女官があきれた その時、
 扉を開ける 荒々しい音とともに、 たくさんの足音と 武器の触れ合う騒ぎが 伝わってきた。

「やはり、来たようですね」


戻る★★★次へ

トラックバック
by まとめwoネタ速neo on 2012/07/12 at 02:37:51

 コクウの婚礼は、 日の入り とともに始まるのが慣例になっていた。 今回ばかりは 早めに始めたかったのだが、 そうも行かず、 少しだけ早められるにとどまった。 大広間に続く 控...

トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア