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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 4−9


 癸(みずのと)日の休日に、
 気分を変えようと マーケットに出かけることにした。

 買いたいものがあるわけではなかったけど、
 平題箭(いたつき)糺(ただす)っていったっけ、
 あの声のきれいな人に会えるかもしれない と思ったのだ。
 平題箭なんて 何処にでもある平凡な名前だから、
 名前からたどって探すのは無理だろう。
 可能性は低いが、他に手は無い。
 火梛には及ばないが、一時の気休めくらいにはなるかもしれない。
 アパートを出たところで、響きの良い 懐かしい声を聞いた。

「どうした。 珍しく元気が無いなあ」
 知らず、うつむいていたようだ。
 嬉しくて顔を上げた。

「久しぶり。
 元気そうだねっていうか、ますます元気そうだね」
「おお、わしは元気だ。 弓月に自慢話をしに来たんだ」
 母さんのお父さん、私の大好きなおじいちゃんだった。

「どこかに出かけるのか」
「ううん、おじいちゃんが来たんだもん、やめるよ」
 おじいちゃんの腕を引いて、我が家にUターンし、家族に来訪を告げた。

「いらっしゃいお義父さん、ご無沙汰してます」
 お土産を受け取って、父さんがニコニコとで迎える。
「ばあさんから連絡は入ったかな」
「あっ、とうさん。 連絡が来たわよ。
 そっちに寄ると思うからよろしくって。 早かったのね」
 なんだ 母さんも知っていたのか。
 聞いていなかったのはわたしだけ? まっ、いっか。
 予想していなかった分 嬉しいし。

「ねえ、おじいちゃん。 胡枇に用事があって来たの?」
 今は 定年退職して 悠々自適に暮らしているけど、
 おじいちゃんは 通信省の偉いお役人さんだった。
 退職後は 趣味に没頭していると聞いていたが、その趣味というのが考古学。
 遺跡めぐりだか 遺跡の発掘だかで、年中動き回っているらしい。

 当然のことながら、
 砂漠にできた新しい町である胡枇に居ては どうしようもないということで、
 おばあちゃんと二人、昔の王都だった于鉧に移り住んでいた。
 考古学も于鉧のほうが盛んだ。
 だから 会うのは本当に久しぶりだ。
 私たちに会う為だけに来たわけではないのかもしれない。

「一番の用事は、みんなの顔を見ることだ。
 二番目の用事は、遺跡保護の申請だ」
「あっ、じゃあ、
 新しく発見された古代遺跡って、お義父さんたちが見つけたんですか」
「その通り!」
「すごいや、おじいちゃん」
 父さんと真麻彦は興奮状態だ。
 私はよく分からなくて、へえ、と言うにとどまった。
 自慢話ってそれか。
 おじいちゃんはよく分かっていない私と母さんのために、
 分かりやすく説明してくれた。

「発表された時は大騒ぎになったんだぞ。
 世紀の発見なんだからな。
 今や おじいちゃんたちのチームは時の人だ。
 発見した遺跡は、大麻本呂婆王国の前身、
 小国だった古代麻本呂婆王国の跡だと睨んでおる。
 場所は真秀良の北東、外摩理(とまり)県の留山(りゅうざん)だ。
 ものすごく不便など田舎だから、道路も通っていないし、
 全く開発の手を逃(のが)れていたところだ。
 おかげで、そっくり残っている。
 詳しい調査はこれからだが、この発見で新たな歴史が分かるはずだ。
 今のところ、従来の説より小さな国だったらしいと推察できる。
 発見したのは都跡だと思うが、思ったより規模は小さそうだ。
 城跡らしいものも見つけたから、
 調査が進めば 真秀良王の本名も分かるかもしれない」


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