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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 4−8


 私って 事件関係者なのだろうか。
 無理やり関係させられた感が否めない。

 ほとんどはニュースで聞いたことと同じだったが、
 玉輝美童が 胡枇芸にほんの一時在籍していたことには ちょっと驚いた。
「無言堂が立派になりすぎたからねえ。
 以前から面白く思ってなかった連中が 全部お得意様になって
 目の前に現われちゃって、
 我慢が出来なくなったみたいねえ。
 高級画材といったら無言堂だもの、
 プロはもちろん 絵に関心のある人間が集まっちゃったのよね。
 身近でうろうろしていなけりゃ 我慢できたかもしれないけど、
 お得意様になっちゃって、
 しょっちゅう関わらなくちゃいけなくなって、
 苛々が募ったみたいよ。
 きっかけは『コメダワラ・リュウの世界』のパンフレットだったみたい。
 星白屋の外商さんが、便宜を図ってもらった御礼のつもりで、
 刷り上ったばかりで 何処にも出ていないパンフを プレゼントしたらしいんだけど、
 それを見ているうちに、
 気が付いたら 切り取り線を描き込んでいたんだって。
 虚維がやったのと同じことをしたわけね。
 我慢できなくなっちゃったんだわねえ。
 考えたら可哀想かもしれない。 不運な男よね」

「確かに不運ですけど、そういうことってあるじゃないですか。
 良いものだけが必ず評判になるわけじゃないですよね。
 やっぱり あれは まずかったと思います。
 苛苛したんなら、
 …… 海に向かって叫ぶとか
 …… 太陽に向かって走るとか
 …… まあ、他の方法でナントカしなくちゃです」

「虚維は 海に向かって叫んだりするわけ? 
 ああ、あんたは苛々しそうもないわね」
 先生に言われて、あれっと思った。
 私、少しばかり苛々してるかも。
 あまりに平和で安全な今の暮らしに……。
 これじゃあ助けを呼べない。 会えない。
 ちょっと叫んでみたくなった。

「私、叫ぼうと思います。
 イボイノシシ――――ッ
 鈴木愛が ひっくり返った。

 私の心からの叫び声は、学内に あまねく響き渡ったらしい。
 その日から、ちょいちょいと聞くようになった。
 課題の期限が押し迫った学生とか、
 制作に行き詰った学生とかの
 『イボイノシシ――ッ』という叫びを。
 ……い行の発音は難しいのに。


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