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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 4−7


 年下の王子様、火梛君は行ってしまった。
 記憶をたどりながら絵を描いてみたけど、
 まるで 漫画か少女小説の挿絵みたいで 我ながらめげる。
 目の前に居るうちに モデルを頼むことを思いつかなかったのは口惜しいが、
 星来の絵を考えると 良かったような気もする。
 あれには敵わない。

 でも私が窮地に陥れば、また助けに来てくれるかもしれない。
 淡い期待を胸に送る日々に、しかし危険は訪れなかった。
 それこそ 平穏無事を絵に描いたような、
 穏やかで何も無い暮らしが待っていた。
 私の身の回りはもちろんのこと、世間も平和そのものだった。

 自殺志願者にめぐり合うことも無く、
 空走車から墜落しそうになることも無く、
 火事に遭うことも無く、
 大きな事件が起こることも無く過ぎていった。
 テレビのニュースショーも話題に困って、季節の風物なんかを流している。
 すっかり秋も深まり、冬が近づいていた。
 いつの間にか増えてしまった学内の知り合いも、星来が追い払っているようで、
 以前と同じ のんきでオバカな日常に戻った。

 前日に提出し忘れた課題を持って 加太和布先生の研究室に行ったら、
 助手の鈴木愛も やっと落ち着きを取り戻した様子で、
 「しょうがないわねえ」と課題を受け取ってくれた。

「ちょっとお待ち! 虚維、こっちに来て座りなさい」
 一つだけ変わったのは、
 加太和布先生に 気安くこき使われるようになってしまったことだろうか。
 私は先生の助手じゃないっていうのに災難だ。
 しかし、この日は こき使われる為に声をかけてきた訳ではなかった。

「火梛君は消えたきりなの? 戻ってきていない?」
「はい。 何の音沙汰もありません」
「麻本呂婆王国の第一王子ってしか分かんないんだものねえ。
 会いにも行けないし、寂しいわねえ」
 私一人では お茶も出ないらしい。

「しょうがないわ。
 虚維は事件関係者だから、
 クリちゃんから聞いたことを詳しく教えてあげるわね」
 そう言って、事件後の取調べで分かったことを話してくれたのだった。


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