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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 4−6


 あの日、まだ そこまで知らなかった私は、
 警部の家から 火梛と一緒に 星来の家に行ったのだった。
 星来が 私に見せたいものがあると言っていたのに、
 事件がらみでバタバタしていて 見に行っていなかったからだ。

 上機嫌で見せてくれたものに驚いた。
 学校をサボって、こんなことに精を出していたのか。
 すごい! さすがに星来だ。

 それは、水墨画で描いた火梛だった。
 星来が火梛に頼んだのは、絵のモデルだったのか。
 風景画や植物の絵と違って、
 墨だけで人物画を描くのは、ものすごく難しそうだ。
 しかし、見事に火梛になっている。

 映画館の舞台で振り返った姿を彷彿とさせる。
 カッコイイ上に、なにやら色っぽい。
 いわゆる妖艶てやつ。
 欲しいと思ったけど、星来の苦心の作だろう。
 さすがに言い出せない。
 火梛も目を見張って見ていた。

「これが己か。 くれ」
 何の躊躇も無く、あっさりと言ってのけた。
「うん、ユンに見せたから、もういい。
 殿下に献上する」
 ええーっ、私が欲しいのに。
 口惜しくて、物欲しげに眺めていたのに、
 火梛は さっさと絵を丸めてしまった。

「世話になった。
 ユンを酷い目に遭わせた悪人を、
 この手で成敗できなかったのは心残りだが、
 少しは礼になったろうか」
「もちろんだよ。 ありがとう」
 成敗されなくて、本当によかった。
 剣の切れ味は本物だ。
 白バラの花吹雪は きれいだったものなあ。

「星来、絵は大事にする。
 元服の祝いに描かせたものより ずっといい」
「元服?」
「そうだ。 ちょうど今年、十五歳の元服を迎えた」
「うそーっ、年下?」
「ユンは いくつになった」
「十六」
「では、一つ上だな。 もっと幼いかと思っていた」
 私だって 火梛のほうが年上だと思っていたわよ。
 ショック。
 年下の病人に、いろいろと負けている気がする。

「そろそろ城に戻らねばならぬ。
 思わぬ長居をしてしまったが、家臣たちが心配しているだろう。
 ユン、頼む」
 そう言われても、はいそうですかと返したくない。
『ユンが居ればそれで良い』
『ユンと一緒がいい』
『ユンと居ると楽しい』
 ドキドキするような台詞を撒き散らしてくれちゃって、
 まだ慣れもしないというのに、お別れなんて寂しい。

「私は 火梛に何もしてあげられなかったね」
「そんなことは無い。 ユンが真秀良に呼んでくれた。
 これから我が国を真秀良にする」
「……」
 何もいえないでいると、火梛がそっと私を引き寄せた。
「ユン、お別れだ。
 己の場所に戻らねばならぬ。 言ってくれ」

「分かった。 帰らなくちゃね。
 ……………… さようなら……」
 あっけなく消えてしまった。
 年下なのに 生意気だ。


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