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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 4−4


 一連の事件の犯人は 火梛が言ったとおり、無言堂だった。
 事件の後始末で、その日のてんびん座での上映は中止になった。

 内緒にしておきたいけど、私が投げ飛ばして気絶させたのは、
 取材しようとしていた平題箭記者だった。
 持っていたのはカメラだった。
 
 他の取材陣は 最初の上映館に駆けつけて取材を終えていたから、
 玉輝美童襲撃未遂事件の現場写真は、
 平題箭記者の独占スクープになるはずだったのだ。
 私は それを駄目にしてしまったみたいだ。
 きっと怒りくるっていることだろう。
 二度と会いたくない。

 火梛は事件解決の功労者だが、
 舞台で剣を振り回したことが 一時問題になったらしい。
 普通なら 警察に呼ばれて事情聴取をされるところだったのを、
 達磨坂警部が 撮影用の小道具だと強弁し、
 うやむやにして、ごまかしてくれたらしい。
「カダメちゃんのたっての頼みですから、特別ですよ」
 と言ったところをみると、先生が泣きつくか脅すかしたらしい。
 どっちにしろ、
 火梛が 何故無言堂と見破ったのかは聞きたいと、
 達磨坂警部の家に招待された。
 警察独身寮の汚い部屋だった。

「クリちゃん、相変わらず汚いわねえ。
 ちゃんとお掃除しなさいって言ったじゃないの」
 加太和布先生が、
 心から厭そうに 脱ぎ捨ててある靴下を摘んで放った。
 放ることはないだろうと思ったが、
 余計なことを言って 片付けろと言われても困るので、
 黙って椅子に座った。

「気にしないでください。 片付ける時間が無いだけですから」
 星来も火梛も平気な顔をしている。
 この二人は、細かいことに頓着しない。
 警部は 市販のボトルに入ったお茶を出してくれ、せかすように聞いた。
「どうして無言堂だと解ったんですか」
 私を含めた三人も身を乗り出す。

「あやつは 見るからに怪しいだろう。
 悪事を働いている顔だ」
 一同唖然とする。
「えっ、ええ――っ」
 と警部。
「それだけ?」
 と加太和布先生。
 星来と私は顔を見合わせた。

「何処で会ったの? 
 一緒に無言堂に行ったときには会わなかったよね」
「一人で出かけたとき、道に迷ったら あの店に着いた。
 あやつが店に居た」
「うわあ、それだけなんですかあ」
 達磨坂の悲鳴に似た声に、一同沈没しかけると、
 火梛が先を続けた。
「コメダワラの部屋に 店の袋があった。
 美術館とやらには 同じ小さな絵が在った。
 不味い料亭で 女将が出してきたのと同じ きらびやかな色紙とやらがあった。
 火事になった屋敷にも 無言堂の袋があった。
 花束を持って 芝居小屋に現われた。
 あやつは 悪事を働いている」
 小さな絵とは絵葉書のことだろう。

「なるほど、根拠が無くもないですね。
 実際、美童用の花束から薬品が吹き出したわけですし、
 火梛さんが あそこで止めてくれなかったら、
 大変な事になるところでした。
 遠隔操作の機械をもっていましたから、
 客席から タイミングを計って発射させるつもりだったようですが、
 火梛さんが飛び出したので、
 あわててスィッチを押してしまったのではないでしょうか。
 警備していた警察の面目も完全に潰れるところでした。
 後は、コモドオオトカゲと二丁目大学ですか……」

「あっ、二丁目大学は額縁よ。 歴代学長の額縁。
 画材店で見つけたって言ってたわよね。
 めったに無いようなアンティークな額縁がおいてありそうな、
 しかも額縁専門店じゃなく 画材店ときたら、無言堂しか考えられないわ。
 それに、伎観の絵を二枚目に貰ったっていうのは 解決したのかしら」
 すっかり忘れていた。
 さすが加太和布先生。

「学生に もれ聞いた話だから 確かなことじゃないが、
 コモドオオトカゲは ヘタクソな絵を描くそうだ。
 自作のディスクの装丁にも使ったことがあるらしい。
 絵にも入れ込んでるんじゃないのか」
 星来も情報を提供した。

「あああああああああ!  すごい。 全部繋がりそう。
 きっと全員が 無言堂のお得意さまだったんだよ」
 感心することしか残っていない。

 結局、舞台の上で真剣を振るったことは、
 六番目の被害を未然に防ぎ、犯人逮捕に協力したこともあって、
 見て見ぬ振りをしてもらえたのかもしれない。
 ん〜、ありがたいけど、良いんだろか。



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