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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 4−2


 というわけで、私たちは てんびん座に来たのだった。

 最初の上映館では 何事もなかったらしい。
 ものすごい警備が敷かれていたようだ。
 推理は外れかもしれない。 その方が良い。
 好きじゃない俳優だからといって、危険な目に遭うのは嫌だ。
 何も起きなければ、ただで映画が見られるラッキーだけが残る。

 席は 前から二列目の真ん中あたり。
 生(ナマ)美童を見るにはいい位置だけど、映画を見るには少し前過ぎる。
 席に付こうとすると、加太和布先生がやってきた。
 火梛は 星来と加太和布先生に挟まれて 奥の席に座ってしまったので、
 私は 一つ空けて通路に近い席に陣取った。
 取られた感じがして、面白くない。

 会場内は、ほとんどが女性客ばかりのようだけど、
 ちらほらと男性客も 肩身の狭い様子で混じっている。
 ザワザワと興奮気味の話し声が 会場を満たしている感じ。
 時折 甲高い笑い声なんかが上がる。

 よく見ると、
 所々に 小型無線機らしきもので話しながら会場を見回している人たちが居た。
 警察の警備だろう。
 あと一つ席が空いている。 八重葎先生はまだなんだろうか。
 そう思っていたら、バタバタとやってきた。

「いやあ、早く来過ぎてしまったので、監督と話をしに行ってました」
「みんな無事なの?」
「はっ?  はい、もちろん。 到着して控え室に居ましたよ。
 満員なので興奮しちゃうな。
 前に手がけた作品は、全然お客さんが入らなかったから。
 こんなにたくさんの人に見てもらえると思うと、すごく嬉しい。
 落ち着かなくて うろうろしちゃいました。
 あっ、そういえば無言堂っていう画材店を知ってますか」
「当然知ってるわよ。 それがどうかしたの?」
「いつから花屋を始めたんですかね」
「花屋?」

「舞台挨拶の時って、花束を渡したりするじゃないですか。
 それ用の花だと思うんだけど、無言堂の主人が運んでました」
「見間違いじゃないの」
「いいえ、
 あそこは品揃えが確かなんで、僕、お得意さんなんです。
 間違いなく無言堂でしたよ。
 僕、最近似顔絵に凝ってるんです。
 知っている人を、実物を見ずに思い出しながら描くと、
 イメージ力と観察力が付く感じです。
 先日、彼を描いてみたばっかりです。
 正統派の二枚目って 難しいんですよね。
 なかなか上手くいかなくて、何枚も描いちゃいました」

 へえ、近頃よく店を空けているのは、花屋をやっていたからなのか。
 あの人なら花屋の店主も似合うと思う。
「白いバラの花束は美童君用ですよ。
 彼は白バラが大好き という設定ですから」
 と言う 八重葎先生の言葉にあきれて、小声で指摘してみた。
「大勢の耳がある場所で 『設定』とか言っても大丈夫なんですか。
 ファンに聞かれたら まずいのでは」

「ファンだって感づいているのさ。
 その上で乗っかって楽しんでいるのだろう」
 一つ奥の席に居た星来が、八重葎先生越しに言い返してきた。
 そういうもんなんだろうか。


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