赤瑪瑙奇譚 第八章――3
やがて、 調査を終えた調査団員も 帰還し始め、
技術援助の具体案や 予想できる見返り等が 検討され、
それぞれの国の 担当者の行き交いも 始まった。
彼らを通じて、 不穏分子の取り締まり状況について、 情報も入ってきていた。
頑張っているらしいが、 肝心の首謀者が 未だになんともならないようだ。
復興や 技術援助の計画は、 着々と 話が進んでいったが、 それらに対しての妨害は 一切無い。
利用するつもりなのか、 それとも 関心が無いのかも 不明のままだった。
しばらくして、 三国に対する マホロバからの援助計画の骨子 が発表され、
カムライとユキアの婚姻も ほぼ同時期に 正式発表になった。
ツクヨリの死が、
一時、 カムライの仕業とか マホロバの暗殺とか いう困った噂になったが、
お茶会の求婚が 信憑性の高い噂 として流れ出すと、 すぐに 消えた。
だが、 婚儀の日取りが 決まらない。
鳴りを潜めている不穏分子が、 その日に 蜂起(ほうき)しかねない という不安があった。
「蜂起させちゃったら」
ユキアが 大胆なことを言う。
「逆に こちらが罠を張って 待ち構えているの。
来なければ来ないで、 もう立ち向かってくる力が無い と安心できるでしょ」
危険な賭けになる。
しかし、 敵は 一向に 動く気配を見せなかった。
もう 力が残っていないならば 良し、
万が一、 地下にもぐって 勢力を拡大させようと活動しているならば、
早く叩いたほうが 安心なのも確かだった。
コクウ王 カリバネをはじめとした 三国の王家では、、
婚礼祝賀会が、 不穏分子が 蜂起する引き金になりかねない と懸念していた。
婚儀には、 三国の中心になる人物が 一同に揃(そろ)う、 大々的な祝典にしなければならない。
大きな花火にならなければ、 意味が半減する。
そこを襲って 一気に皆殺しに出来れば、 簡単に片がつく。
他国からの介入を抑えるために、 マホロバの姫と マホロバから列席する重要人物を 人質にすればいい。
そう考えるのは、 容易に察しがついた。
敵にとって、 絶好の機会を 与えるようなものなのだ。
だが、 このまま 時間稼ぎをして、 敵の弱体化を待っている わけにも行かない事情があった。
どうやら 大物が絡んでいるらしいことを思えば、 時間があれば 勢力を拡大する恐れがあった。
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