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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 3−14


「おお、久しぶり」
 寝ぼけたような 情けない声になってしまった。
「ふふっ、私がいない間に、学内の知り合いが爆発的に増えたようだな」
「そうかなあ。 変わらないよ」
「いや増えた。
 休み時間になると だれかれかまわず声をかけていて、入り込む隙間がなかった」
「ごめん」
 そうだ、火梛の様子を聞かなくちゃ。
 迷惑をかけていないだろうか。

「ユン、会いたかったぞ」
 隣の黒縁眼鏡が言った。
 開口一番、よく通る声で きっぱりと放たれたこの台詞に、
 対処の仕方が分からない。
 笑ってごまかすことさえ出来なかった。
「あわわわ、居たんだ」
 眼鏡以外は、いまどきの若者風になっている。
 きっと、お兄さんからの借り物だろう。

「うむ、朝から星来と一緒に授業を受けていた」
 ええっ、今日は経済学と教育学、
 それから何だっけ…… 今のは法学だったような気がする。
 あと一つは文化人類学?
「聞いてて分かったの?」
「ほとんど分からぬ」
 うん、そうだろう、そうだろう。
 私と同じだ。
「だが、考え方は面白かった」
「あはは、そうなんだ。
 ところで、学校を休んで星来は何してたの」
「それをユンに見せようと思った。 うちに来ないか」
「行く!」

 三人で大教室を出たところで、ばったり加太和布先生に捕まった。
「あらあ、久しぶり。
 ここで会ったが百年目よ。 研究室にお茶を飲みにいらっしゃい」
 有無を言わさず拉致された。

「火梛君、邪魔くさい眼鏡を取りなさいよ」
 先生は お茶を用意しながら、眼鏡無しの火梛をうっとりと眺める。
「ほんと、綺麗よねえ」
 それが拉致の目的だったらしい。
 途中、ドアから助手の鈴木愛が入ってきたが、
 三秒間固まった挙句、きびすを返して あわてて遁走した。
 私たちは 彼女の疫病神らしい。

「母君は よく ユンにヤキモチを焼くのか」
 火梛がボソリと言った言葉の意味が、とっさに分からなかった。
 首を捻っていると、
またヤキモチを焼かれる、とふさいでいたではないか」
「そんなこと言ったっけ」
「言った。 『また』と確かに言った』
「なんで そんなこと言ったんだろう。
 だって 母さんが私を妬(ねた)むなんておかしい。
 出来が悪いと小さい頃から 散々叱られたんだよ。
 まともに字も書けないなんて、なんてオバカな子なんだろう
 ……あっ……」
 思い出した。


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