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赤瑪瑙奇譚 第八章――2



 捕らえられたメギド公は、 王位継承権を剥奪(はくだつ)され、 とりあえず 投獄された。

 春の離宮の なかば勝手な修復も、
 カムライとユキアを 閉じ込める為の 仕掛けを作る目的で 行われたものだった。
 すべての出入り口に 格子が 落ちるようになっていたのだ。

 ちなみに 二人が落ちた穴は、 指示して作らせたものではなく、
 工事を請け負った からくり好きの大工、 アトメの 趣味だったとか。
 町外れに在った小屋は、 実験場だったらしい。
 それを、 勝手に 利用されてしまったのであった。

 さらに、 ツクヨリが ミノセを陥れるために行われた 辻斬りの被害者は、
 無作為を装ってはいたが、 三人とも 離宮の工事関係者で、 口封じの意味もあったようだ。
 次は アトメが 殺されていただろう。

 離宮の仕掛けは、 取り外すと 建物全体が おかしくなる為、
 カムライと ノコノコ戻ってきたホジロ が立会いのもと、
 仕掛けが 発動しないように 細工された。

 全く迷惑な『修復』だが、 ある部分を外したたけで、 簡単に 動かなくなった。
 しかし 原理を知らない者には、 二度と 復旧させることは 出来ないだろう。
 何をどう外したのか、 見たところでは 全然解らない。


 コクウ国内の 不穏な動きは、 一応未然に防がれた といって良いと思われた。
 問題は、 ツクヨリを殺した者だ。

「陛下、 ツクヨリを 我が手で捕らえる気になりませんでした。 私の失敗です」
 カムライが うなだれる。
「うむ、 捕らえたところで 極刑にするしかなかった。 哀れな最期だったが、 仕方あるまい」

「それにしても、 切り口が見事すぎます。 よほどの手練(てだれ)でしょう」
「単に ツクヨリを切れる者なら、 いくらもいるだろうが……」
「あれだけの腕となると、 そう多くはいません」
「コクウの者 とは限るまい」
 王の指摘に、 カムライは 渋面を隠せない。
「他国から 潜入してきたのでしょうか」
「ツクヨリが死んでしまったから、 メギド以外の協力者がいるのか 判っておらん。
 その辺を狙って、 工作に来たのかもしれん。
 もう 出会いの演出は十分だろう。 ユキア姫には 帰ってもらおう。
 危険は 避けたほうが良い」



 ユキアが マホロバに 帰る時が来た。
 カムライが 護衛を率いて 国境まで 送ることになった。
 ユキアは、 馬車の窓から 町並みを眺めて 感慨深い思いを抱く。
 もう少ししたら、 ここが 自分の国になるのだ。

 まもなく 城下を出ようとするあたりで、
 物陰から 一行を、 いや、 カムライを じっと見つめる男に気づいた。
 ユキアが観察していると、 相手も 気づいたように 視線をユキアに向ける。
 互いの目がぶつかり合い、 男は にやりと不敵な笑顔を見せた。

 馬で 脇を進むカムライに 知らせようとして、 窓に手をかけると、男は 不意に消えた。
 黒ずくめの衣装に身を固めた、 妙に 気になる男だった。

 消えた場所を じっと見ていたユキアが、 振り向いて 言った。
「ねえメドリ、 お願いがあるのだけど」

「駄目です」
「まだ、 何も言っていないわよ」
「姫様の身代わりは、 お断りです」
「どうしても?」
「どうしても 駄目です。 お嫁入り前なんですから、 少し おとなしくしていてください」
 メドリは、 梃(てこ)でも 動きそうになかった。

 ユキアを乗せた馬車は、 一路 マホロバに向かった。


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