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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 3−11


 瑞祥庵に着いた。
 店の人に案内されて進むと、いくつも角を曲がっていく。
 複雑なつくりになっているが、
 ボラボラ坊ちゃん邸とは違って ちゃんと理由がある。
 お客さん同士が かち合わないようにする為だろう。
 店の人も迷ってはいないから、複雑に見えても規則性があるのだ。

 奥まった部屋に通されると、
 案外腰の低いおじさんと 部下らしい若い女性が 出迎えてくれた。
 火梛を見て 目を見張っている。
 火梛が当然のことのように上座に付こうとしたので、
 あわてて止めに入ろうとしたが、
 星来のお父さんが 火梛に上座を勧めた。
「殿下、どうぞこちらに」
 星来は お父さんにどういう説明をしたのだろう。
 しかし、火梛は堂々としていて、収まりが良い。

 和やかに食事が始まった。
 次々と料理が運ばれてくる。
 なんか、ふううんていう感じ。
 確かに盛り付けも豪華だし、とても手が込んでいて不味くはない。
 でも、見た目も味も何か違う。
 何かが足りない。 なんだろう。
 美味しいものを食べると、うれしくなるものだ。 違う? 
 好物だったりしようものなら、そりゃあもう、幸せいっぱいで、
 体の奥から「生きていてよかった」的なものが、
 ふつふつとわきあがって来たりしないだろうか。
 私はなる。
 そういうワクワクが さっぱりこない。

 一般家庭に育ち、
 食通なんてものとは縁遠い庶民の私が言うのもおこがましいけど、
 思ったほど たいしたもんじゃない。
「何の餌だ」
 火梛君、ちょっとそれはマズイんじゃないだろうか。

「ご馳走になっておいて悪いけど、ひどいね」
 例によって星来の過激発言が出た。
 招待してくれたおじさんが、怒りもせずに頭をかいた。
「いやあ、お嬢さんの言うとおりだ。
 評判だと言うから、私も初めて席を取ったんだけど、
 凝っているだけで品がない」

「年を取ると味覚が鈍くなるから 私も自信がないけど、
 素材に問題があるんじゃないのかしら。
 食材の味がよく分からない。
 若い人の舌のほうが鋭いでしょう。どう、星来」
 星来のお母さんも首を傾げる。
「うん、高級食材を使っているという謳い文句らしいが、普通だな。
 それを高級に見せようと手をかけすぎて、
 かえって素材の味が飛んでしまった感じかな」

「やれやれ、失敗だったようですね。
 とんだ店に招待してしまった。
 殿下にも申し訳ないことをしました」
 招待主のおじさんまで、すっかりその気で 火梛を王子様扱いしている。
 良いんだろうか。

 ちょっと待てよ。
 政治体制が変わって 王様はいなくなったけど、
 王家が絶えたと言う話は聞いていない。
 考えたら 麻本呂婆王家の子孫が どこかにいてもおかしくないんだ。
 嘘っ!  もしかして本物なんてあり? 


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