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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 3−10


 一応、おめかしをして出かけた。
 結婚式と同じだろう。
 平服でお越し下さい といわれても、普段着で出かけたら恥をかく。

 迎えに来てくれた車に乗ると、火梛がいた。
「その服、どうしたの」
「星来の兄者(あにじゃ)に借りた」
 仕事用ではない。
 おしゃれな若者がデートで着るような 軽い衣装を纏った火梛は、
 惜しげもなくカッコイイ。

「昨日は迷子にならなかった?」
「なった。 この町は方向感覚を狂わせる。
 己は 野山で迷ったことが無い。
 おのれの影を見れば、その方角と長さで、
 おおよその時刻と どちらに進んでいるかは判断できる。
 しかし ここでは影がいくつも出来る上に、
 進む度にめまぐるしく方角も長さも変わる。 面妖だ。
 山も道も木々も、
 己の国では 一つ一つが違う固有の姿をしているのに、
 ここでは 道は何処も同じ様(さま)だし、
 建物も 見慣れぬせいか特徴がつかみにくい。
 木の枝と草や葉は 光に向かって伸びると思っていたが、
 この町の木々は みな同じ形をしている。
 音の来る方向も読みにくい。
 やはり魔法の国にしか思えぬ」

 建物の反射があるから、
 街中で いくつも影が出来るのは、子どもの頃から知っていたけど、
 不思議に思ったことが無かった。
 音も 反射を繰り返し 混ざり合って雑音になるんだ。
 街路樹は 毎年きれいに剪定される。
 生まれ育った場所だから、馴染んでいて不思議にも思わなかったが、
 なるほど 大自然から見れば 都会は特殊な空間なのかもしれない。
 特に胡枇は 人工的に作られた町だから、土地の高低差がほとんどないのだ。
 慣れていないと迷子になるのも分かる気がした。
 ともかく無事でよかった。

「発信機のおかげかなあ」
 と言うと、
「いや、自分で帰ってきたから、
 迷子になっていたとは知らなかった」
 星来が いまさら驚いている。
 星来と心配性は無縁だ。
 冷たい訳ではないと思う。 細かいことを気にしないんだ。

「そういえば、和丹青の壷は贋作だったらしいじゃないか。
 欠片を精密に調べたら 百年も経っていなかったらしい。
 よく出来ていたから分からなかったなあ。
 松毬翁も気に入っていたので、あえて科学的には調べていなかったらしい。
 どちらでも良かったのだろう」
「うん、なんか迫力あった。
 贋作でも 壊れたのはもったいなかったよね」
 ニュースによると、
 古色をつけるために わざと傷や罅を入れてあったみたいで、
 そこから割れたらしい。



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