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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 3−8


 店長は不在だった。
 もしも居たら、
 火梛の変装を解いて見せびらかす誘惑に 勝てたかどうか自信が無い。
 絶対に勝ってる。
 何よりも声が良い。

 星来は おしゃべり店員に声をかけて、早速物色に入った。
 星来の質問に 即座に詳しい返事が返ってくるのはエライ。
 おしゃべりも伊達じゃなかったんだ、
「そうだ、これなんかどうですか。
 材料も製法も 太古のものを復活させて作られています。
 布に描かれた絹本は、裂けてしまったり、
 虫食いなどにやられたりして 長持ちしにくいですが、
 紙は相当古いものが残っています。
 それを調べて、同じものを現代に甦らせました。
 ちょっと描きにくいかもしれませんが、風合いが面白いでしょう」
 もちろん、星来はそれも買った。
 凝りだすと容赦が無くなる。

 おしゃべり店員が 他のお客さんに問われて答えているのを、
 聞くともなしに聞いていると、
 どうやら近頃は店長の不在が多いという。
 怠けているわけではなく、あちこちに営業に行っているらしい。
 笑顔をふりまいて営業しているところは、想像できない。


 家に帰ってニュースを見たら、吃驚した。
 私たちが美術館を出た直後に 事件があったらしい。

 翌日の休み時間に 加太和布先生を探した。
 達磨坂は事件で忙しくて、火梛どころではないかもしれないけど、
 今日は火梛が居ない。
 星来が ちょっと借りたいといって連れていったのだ。
 確かめる良い機会だと思った。
 本人の居るところでは やっぱり聞きにくい。

 先生は研究室に居た。
「達磨坂警部から連絡は…… まだですよね。
 事件が続いて忙しいでしょうし」
「あったわよ。 そうそう、昨日の美術館の事件は知ってる?」
「ニュースは見ました」
「はじめは 単に事故だと思われたみたいよ。
 展示中に 誰も触ってないのに 割れたんだっていうじゃないの。
 それがさあ、鉛の粒がいつの間にか ぎっしり詰められていて、
 重さに耐え切れずに、
 罅(ひび)の入ったところから 一気に割れたらしいわよ。
 でも惜しいわ。
 幻の銘陶 和丹青(わにせい)の壷よ。
 ほとんど残っていないのよね。
 蓋(ふた)付きだから 気が付かなかったらしいわ。
 どーゆーつもりなのかしら。 もったいないことをするわよねえ」

 昨日、美術館で見た。
 とっても有名だ。
 和丹青の壷を巡る推理小説まであって、
 骨董品に縁の無い私でも 聞いたことがあるくらいだ。
 ただ、名品だというから、
 もっと落ち着いた感じのものを想像していたけど、
 ものすごくド派手な彩色の壷だったので、ちょっとびっくりした。

「陶器って、鉛の重さに耐えられないものなんですか」
「分かんないけど、何しろ大きいし 四百年以上前のものだから、
 見えなくても傷や罅が入ってたんじゃないの。
 展示中に割れなくても、終わってから移動しようとすれば、
 その時点で やっぱり壊れたでしょうね。
 でね、出たのよ。
 和丹青の壷からコメダワラの切れ端が」
 ということは、連続した事件なんだ。
 でも最初の二つ、
 コメダワラと迷いの森はなくなっても惜しいとは思わないけど、
 『和丹青の壷』といえば 名品の代名詞だ。
 つながりが分からない。

「あっ、そうじゃなくて、
 火梛のことで 連絡がなかったかと思ったんですけど、
 警部は やっぱり忙しくて無理ですよね」
「連絡はあったって言ったじゃない。
 クリちゃんは そういうのは不得手だから 得意な人に頼んだみたいよ。
 ウィンク一つで引き受けてくれる信奉者が
 署内に いくらでもいるみたいだから」
「げっ、で、どうだったんでしょう」
「分からないって。
 行方不明者も病院関係も 徹底的に調べてくれたらしいけど、
 該当者無し。
 あとは真秀良と国交の無い偏屈な国か、
 人跡未踏の未開地くらいしか可能性は無いらしいわ。
 もしかして、よその星の王子様!?」

 常識的な手段を使って帰すのは無理のようだ。
 どうしよう。
 我が家も そろそろ限界かもしれない。


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