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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 3−7


 火梛、はいつもどおりだった。
 二百年前の彫刻も、三百年前の絵も、四百年前の焼き物さえ、
 まるで 目新しいものを見るときと同じだ。
 しきりに感心したり 喜んだりしている。
 その様子は可愛らしいが、
 いったい、いつの時代の王子様の設定なんだろうか。

 展示品は まあまあだった。
 私から見ると、どれも歴史を感じさせる重厚なものばかりで、
 好き嫌いではなく 良い物という基準の収集に思えるが、
 どうやら火梛には斬新に見えるらしい。

「書いてある年号の数字が 大きすぎるようだ。
 どんな数え方をしているのだ」
 また始まった。 星来に任せることにした。
「小国だった麻本呂婆王国が 周囲の国々を平定して、
 真秀良王が新しく法を定め、暦を制定した年を基準にしている。
 現在は、この麻本呂婆暦を使っている国が多い。
 甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の十日間を旬とし、
 一月(ひとつき)に 上旬・中旬・下旬の三旬が巡る。
 一年は 一月から十二月まであるが、
 他に 二月と三月の間に木の日、四月と五月の間に火の日、
 六月と七月の間に土の日、八月と九月の間に金の日、
 十月と十一月の間に水の日 と五日あって、
 三百六十五日と定められている。
 四年に一度、十二月と一月の間に日の日が入って、
 一日多い閏年と呼ばれている。
 学校は 木の日から始まるから、
 木の日を学業の区切りとして、年度始めにしている」
 うんうん、任せて正解だった。
 二月と八月には、
 昼間の長さと夜の長さが同じになる、
 春節と秋節があるという説明を聞き流しながら、残りを見学した。

 見終わって売店に行くと、今回の特別展のカタログがあったが、
 欲しいというほどでもない。
 唯一気に入ったのが、象に載って陽気に笑っている神像だけど、
 絵葉書があれば、それだけ買おうと商品棚を見た。
 どこかで見たことのある絵葉書だが、展示作品とは関係が無いようだった。

「あれっ、展示作品の絵葉書は ないのかなあ」
 ぶつぶつ言ってたら、
 販売員さんが「こちらです」と指差すところに纏めて有った。

「無言堂に寄りたいのだが、ユンも付き合う?」
 何も買わなかった星来が誘う。
「うん、付き合う。 何を買うの?」
「紙。 水墨画に嵌(はま)ってしまったのだ。 面白い」
「あははは、分かる。 思ったより面白いよね。
 つきたて、破墨、たらし込み、米点、覚えた技法を使うだけで、
 ちゃんと水墨画になっちゃうんだよね。
 私も嵌りそう。 紙だけなの」
「筆と墨は 星白屋の外商に 最高級品を注文したが、
 紙は扱っている種類が少ない。
 うちの外商担当も、
 得意客に頼まれて 無言堂で調達したことがあったらしい。
 自分で行ったほうが早いし、あれこれ選べる」

 誘われるままに、無言堂に行くべく、
 美術館を後にした。



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