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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 3−3


「あっ! 居た。 虚維さん」
「ちょっと、何者」
 先生の声が尖る。
「失礼。 平題箭と申します。
 記者ですが、取材を……」
 加太和布先生は 最後まで言わせなかった。

「勝手に研究室に入ってこないで頂戴。
 今、大事な補習授業の最中なのよ。
 だいたい研究室は 部外者の立ち入り禁止なんだから、
 突然飛び込んでくるなんて非常識よ」
 ポンポコ狸の一喝は 迫力満点だった。

「大変失礼いたしました。
 気が急(せ)いておりました。 改めて出直してまいります」
 出て行こうとした平題箭を先生が呼び止めた。
「何の取材がしたいの」
「先生もご覧になったでしょ。 突然消えた美貌の青年です。
 あれは紛れもなく事件です」

「残念だけど、特ダネにはならないわよ。 誰も信じないわ。
 今時 そこいらの手品ショーだって、
 人が出たり消えたりするだけじゃあ、お客も喜ばないわよ。
 映像だって 特殊効果でいくらでも作れるし。
 記事にしたところで、
 持ちネタの少ない駆け出し手品師の 単なる人騒がせにしか思われないわ。
 彼を不用意に傷つけるだけよ。
 あなたの経歴にだって傷が付く。 止めておきなさい」
「でも、現われる直前か、消えた直後の居場所が証明できれば、
 話が違ってきます。
 移動時間と移動手段を問題に出来ます」
「無理だわね」
「とにかく、彼の正体を知りたいのです」
 やはりスッポンだ。 諦めそうに無い。

「麻本呂婆王国第一王子、火梛だ。
 取材とやらは断る」
 突然響いた高らかな声に、平題箭さんが驚いた。
 声の主を、しばし じっと見詰める。
「………… ん? …… あ、………… ああっ、あなた。
 なにその格好。
 いくら何を着てもカッコイイからって、
 野暮ったい黒縁眼鏡に おっさんの普段着みたいな服を着せられて……
 私が もっといい服を買ってあげるわよ」
 確かに おっさんの普段着だ。 鋭い。

「断る」
「……あれっ、
 麻本呂婆王国の王子 ……って言った?」
「分かったかしら。 恐れ多くも王子様なのよ。
 変な記事を書いたら、人権侵害で訴えるからね。
 引っ込んでなさい」

 平題箭さんが唇を噛んだ。
 ようやく 記事にするのは難しいと悟ったようだ。
 病人を不用意にマスコミの前に引っ張り出したら、
 面倒なことになる。
 眉間に縦じわを寄せ、すごすごと出て行った。



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