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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 2−15


 警察に拉致されそうだ。
 こういう時こそ 勇者に助けて欲しいのに、
 火梛は 興味深そうに 空走車を眺めているばかりで 役に立たない。
 と思っていたら、いきなり屋根に飛び乗った。

「そこ、乗るとこじゃないから」
 引き摺り下ろそうと 捕まえて引っ張るが、
 怪訝そうな顔をするばかりだ。

「ちょっと待った!  私も行く」
 そこに現われたのは 星来だった。
「あら、級長戸辺(しなとべ)君だったかしら、
 虚維の友達よね。 授業はいいの」
 私を拉致しようとしているくせに。

「近頃 ユンが危ない目に遭ってばかりいるから心配だ。
 私も行く」
 そうじゃなくて 止めて欲しい。
 しかし、空走車は大型だから、
 全員乗れてしまうところが、また口惜しかった。
 火梛も、なんとか屋根から降ろして 座席に納めた。

 今回は 退屈なくらい安全運転だった。
 前の座席に座った先生が、隣の達磨坂をつついて言った。
「ほらクリちゃん、謎の美青年よ」
 後には 私を真ん中に挟んで三人が座っている。
 振り返って、達磨坂は戸惑った顔をした。
「あれっ、女性だったんですか。 でも感じが違いますね」
 星来を見ている。
 しょうがないから、私が火梛の眼鏡と帽子を取ってやった。
「うおおおおぉぉ」
 嬉しそうに吠える。

「よかったあ。 実在していたんですね。
 うっかり 署で彼のことを話そうとしたら、
 無理やり 休暇を取らされそうになりましてね。
 自分でも不安になっていました」
「ユン、紹介してよ」
 星来に促された。

「あっ、そうか。
 加太和布先生。 私が勉強を教わっているの。
 達磨坂警部。 警察の人。
 警察っていうのは、悪い事をした人を捕まえるのよ。
 で、一番の友達、星来。
 この人が 火梛君。……」
 王子様とは言いにくい。
 詰まっていると、自分から口を開いた。
「麻本呂婆王国第一王子、火梛だ」
 車内に静寂が訪れた。
 言わんこっちゃない。

「はじめまして。 よろしく」
 立ち直りは、星来が早かった。
「……すると、お住まいは于鉧(うけら)城ですか」
 麻本呂婆王国の都といえば、于鉧のはずだ。
 恐る恐る聞く達磨坂は、間違っていない。 
 しかし、そんな達磨坂を鋭い視線で一瞥して、
「いや、竜牙(りゅうげ)城だ」
 堂々とした物言いに、誰も 異議をさしはさめないでいる。
 竜牙城なんて 聞いたことがないぞ。
 ここにきて、独創性をぶち込んだのか?

「警部、到着しました」
 運転していた おまわりさんの声に、
 気が付けば 真秀良でも有名な高級ホテルに着いていた。
 達磨坂は 瞬時にお仕事仕様に切り替える。
「皆さんも、ご一緒にどうぞ」
 きびきび降り立って中に入り、
 受付に声をかけ、向かったのは最上階だ。
 私たちも後を追う。
 火梛は 再度変装して、おとなしく付いて来た。
 達磨坂は 部屋番号を確かめ、呼び鈴を押して待つ。



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コメント
2763: by LandM on 2015/01/16 at 21:58:49

なかなか風流というか。
しのぶもじずりさんの滑稽さと面白さがでていて読んでいて楽しいですね。この辺りから面白くなるのですかね。

2764:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2015/01/17 at 10:33:56 (コメント編集)

風流な滑稽!
ん〜、良いかも♪
座右の銘にしちゃおうかしらん。
ありがとうございます。

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