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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 2−14


 昨日、 火梛を家につれて帰った私は、
 台所で料理中の母さんの元へ行った。

「ただいま。 命の恩人を連れてきたんだけど、
 ウチに泊めてもいい?」
「急に言われても困るわ。 帰ってもらいなさい」
 振り向きもせずに 却下された。

「でも 命の恩人なんだよ。
 三回も 危ないところを助けてくれたんだよ。
 良いでしょ」
「だいたい、 あんたが危ないことをするから いけないんでしょ。
 人様に助けてもらうような……………… いらっしゃいませ。
 狭い家ですけど、ごゆっくりどうぞ」
 振り向いて 火梛を見たとたんに、態度が変わった。

 虚維沙本見児(さおみこ)四十一歳の瞳に、輝く星々がきらめいた。
 これは想定の範囲内だ。
 しかし、想定の範囲外のことも起こった。
 仕事から帰宅した 虚維弓弦(ゆづる)四十一歳の瞳にも、
 煌(きら)めく星々が宿ったのだった。

「男同士、朝まで飲み明かしましょう。
 君と親密になりたいものだ」
 通りすがりの旅人だ と紹介したが、
 二人とも気にする様子はない。

 倦怠期をとうに過ぎたはずの夫婦の間に、火花が散ったのを見た、
 と思ったのは 幻だったのだろうか。
 危険だ。
 あまりにも危険すぎる。 父さーん。

 幸いにも 五歳下の弟真麻彦(さおひこ)十一歳が救ってくれた。
「僕の部屋に泊まってよ。 一緒に寝よう」
 彼は 太った不細工だ。
 この組み合わせなら大丈夫だろう。
 母さんは 真麻彦には甘いので、
 弟の言うことには、ほとんど文句を言わない。
 かくして、我が家の平和は 綱渡りを始めた。


 三人が 廊下で立ち話をしていると、
 加太和布教授の携帯電話が鳴った。
「あらクリちゃんだわ」
 先生が 電話で話を始めたのをきっかけに、 退散しようとした。
「ちょっと虚維。 待ちなさい。
 一緒に来るのよ」
「だって、もう一つ授業が残ってるんです。
 ごめんなさい。 お付き合いできません」
「何の授業なの?」
「哲学です。 理論武装には欠かせません」
「代わりに教えてあげるわよ。 来なさい。 はい」
 例の 重すぎる鞄を渡された。

「先生、困ります」
「知ってるでしょ、 鈴木愛が今日もいないのよ。
 そうだ、ちょうど良いわ、 火梛君もいらっしゃい」
 鞄を返そうと追いかけたが、 身軽になった教授は歩くのが速い。
 ジタバタ追いかけているうちに、校舎から出てしまった。

 ゆっくりと 空から空走車が降りてきた。
 達磨坂が乗っていたものより大型だ。
 地上に降り立つと、しかし やっぱり達磨坂が出てきた。

「クリちゃん、今日は大きいのね」
「上からの命令で、空走車の運転を禁止されました。
 警察官が事故ったら。シャレにならないからだそうです。
 今日から運転手付きになりました。
 事故ったりしないのに、みんな心配性なんだから。
 おや、虚維さんもご一緒ですか。
 わたしの 華麗な運転技術がお見せできなくなりました。
 残念です」

 見事なウィンクをするけど、
 もう ヤバすぎる運転技術なら、いらないから。
「じゃあ、二人とも早く乗って頂戴。 行くわよ」


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コメント
2761: by 椿 on 2015/01/12 at 19:42:21

家に連れて帰ってたのか!
そして家庭内でまさかの展開が(笑)
本来、一番ときめき展開になっていいユンちゃんが、一番冷静だし。
もう、すごい面白いです(^o^)

2762:Re: 椿様 by しのぶもじずり on 2015/01/13 at 10:34:02 (コメント編集)

ユンの家族です。
こんな人たちです。
正体不明の男を自宅に連れ帰るユンも、たいがいです。
楽しんでもらえたみたいで、嬉しいです。

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