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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 2−11


 次々とやってきた消防車に取り囲まれて、大騒ぎをしている最中に、
 私たち三人は窓から飛び出した。

 軽々と鈴木愛を背負っていた彼は、駆けつけた消防隊員に彼女を渡す。
 無事に脱出できてほっとした。
 そうだ、三度目の正直。
 今度こそ命の恩人の名前くらいは訊いておかなくちゃ。

 口を開きかけた途端、その口を塞がれた。
 もう一方の腕で体も絡め取られる。
 身動きできないようにされた私に、現実離れした美貌が迫った。
 めまいがする。
 消火活動に動き回る大勢の消防隊員に取り囲まれた火事現場で、
 私どうなるの。何をされるの。
 もしかして、落花狼藉? ええーっ!

 そんなわけもなく、私を睨みつけた彼は言った。
「己(おれ)を消すな。何が起こったのか知りたい。
 訳を聞かせてもらおう。いいな」
 この人も気が付いたらしい。
 私が『さよなら』と言えば、消えてしまうことに。

 何処まで説明できるかどうかはともかく、
 口を塞がれたまま、かろうじて頷いた。
「で、そなたは何者だ」
 先に聞かれてしまった。

「ユン」
 個人情報を保護しようとしたつもりは無かったが、
 とっさにそう答えていた。
「ユンは魔法使いなのか」
 違う、多分違う。
 と思いながら、首を大いに横に振った。

「芸術大学校、美学・美術史学科の平凡な学生。
 運動神経には少し自信があるけど、
 頭は空っぽだとよく他人に言われる」
「空っぽなのか?」
 こいつ真顔で聞いてきた。

「さあ、ところで貴方はどちら様?」
「火梛(かなぎ)、麻本呂婆(まほろば)王国の第一王子だ。
 腕っ節には自信がある。
 他人には……美しいとよく言われる」
 後半の部分に異議は無い。
 しかし前半の部分はどうしたもんだろう。

 麻本呂婆王国なら 私でも知っている。
 真秀良の昔の名前だ。
 王制が無くなった時、 真秀良に変わったのだ。
 大昔、 小さな王国だった麻本呂婆が、
 争いを続けていた いくつもの小国を 一つに纏めて、
 大国を築き上げた。
 後に発展して栄華を極め、 今の真秀良になっているのだが、
 大国麻本呂婆王国を築き上げたのが 英雄真秀良王 と伝えられていることから、
 制度が変わり、 国が生まれ変わる時に その名が選ばれた。

 『真秀』は 充分に整って優れているという意味で、
 それに『良』まで付いているところから、
 本名ではなく、 一種の尊称ではないかとの説もある。
 
 何はともあれ、 立派な王様だったのだろう。
 初等学校の社会科の時間に習った。
 社会は、 えーと、ごめんなさい。 社会苦手だけど、
 これくらいなら知っている。

 ということは、
 入院中の患者さんを呼び出しちゃったんだろうか。
 一難去って、 また一難、 災難の連鎖反応なんだろうか。
 しかし 命の恩人だしなあ。
 おまけに とびっきりの美形なのが 余計に不憫だ。
 お礼に何とかしてあげたい。

「何故、 己はここに居る」
 そうだった。


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コメント
2751: by キョウ頭 on 2015/01/05 at 21:51:57

寒中お見舞い申し上げます。
今後も、よろしくお願い申し上げます。
(わたくし個人の事情により、年始のご挨拶は寒中見舞いとさせていただきます)

遂に、ナゾの助っ人の正体がッ!
…って、王族!?

2752:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2015/01/06 at 16:32:38 (コメント編集)

やっと出てきました謎の美声年。
思っていたより再登場に時間がかかりました。
ヤレヤレです。

本年もどうぞよろしくお願いします♪

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