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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 2-3


「えーっ、 こんな真昼間に幽霊? 
 やだあ、 何処、何処」
「猟犬だ」
 反射神経で振り向くと、
 身を隠そうとして間に合わなかった 平題箭記者がいた。

「イーターツーキーさーん。 お買い物ですか」
「明らかに違うな。 どう見ても不振人物だろう」
 星来に指摘されて、 女記者が諦めたように近づいてきた。
「まったく目ざといわね。
 あれからどう?」
「元気にやってます。
 おかげさまで 鈴木助手も職場復帰を果たしました」
「あ、 そう」

 そのとき、 後から若い男の声がした。
「あ、あのう、 立ち話もなんですし、 お嬢さん お茶でもいかがですか」
 無言堂の店内で見かけた人だ。
 ナンパするには時宜を間違ってるし。
 しかし 三人の女に見つめられても、 彼は負けなかった。
 星来一人に向かって 頑張っている。
「もちろん僕のおごりです。
 お茶じゃなくても クリームソーダでも チョコレートパフェでも、
 なんだったら 蕎麦とかうどんでも……」

 我慢できずに 平題箭さんが口を挟んだ。
「君、 こんな美人を いきなりナンパするなんて、 度胸があるわね。
 それも 蕎麦とうどんで。
 君みたいに何の取り柄も無さそうな男は、
 普通 びびって声もかけられないものだけどね」

「はい残念でした。 お断りします。 さようなら」
 すかさず 不機嫌な星来に代わり、 いつもの段取りで私が断る。
 星来は、 我関せずとでも言うように 平題箭さんに氷の視線を当て、
 冷ややかに宣告した。
「尾行は止めなさい。 無駄だ」
 私の手をつかんで さっさと駅に歩き出す。

 肩越しに振り返れば、 平題箭さんは両手を広げて 肩をすくめており、
 麺類でのナンパに失敗した青年は、 いまさらながらのように固まって、
 二人とも追ってくる様子は無かった。

「ねえ、 平題箭さん 変なこと言ってたね。
 星来をナンパするなんて 度胸があるとか、
 普通は びびって声もかけられないとか。
 いつも バンバン声をかけられているのにね」
 帰り道で思い出し笑いをしてしまった。

「やはり気付いていないのか。
 ユンと一緒だと いつもうるさいくらいに寄ってくるから 無理もないか。
 平題箭女史の言い分は もっともなのだ。
 ユンがいない時の私に 声をかけてくる人間はまず居ない。
 ちょっと可愛いだけならともかく、 私ほどの美人になると、
 よほど自信過剰でもなければ、 大概は 声をかけるまでもなく諦めるものだ」
 こういう台詞を私が言っても 冗談にしかならないが、
 星来が言えば 納得するしかない。

「えっ?  じゃあ、 なんで……」
「ユンのせいだ。 それしか考えられない。
 何故なら、 ユンが居ない時に 声をかけられたことは一度もない。
 スカウトされたことさえも 無い」
「じゃあ、 じゃあ私が ずうっと迷惑かけてたんだ。
 知らなかったなあ。 ごめん」
「いや、 面白いからいい」
 不機嫌に見えていたけど、 面白がっていたらしい。



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