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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 2-1

 付けっぱなしのテレビから ワイドショーが流れていた。
 コメダワラ事件から 半月近くも経過していたが、
 捜査に進展が無いことを 番組に出演している解説者が非難している。
 特徴のある事件ほど 手がかりは残りやすいものだが、
 これほど特異な事件だというのに 捜査が行き詰っているのは、
 警察に問題があるのではないか。
 捜査官の能力を疑う。
 と散々だ。
 格好ばっかりつけていて、 達磨坂警部は無能だったらしい。

 そろそろ出かけないと、 星来との待ち合わせの時間だ。
 駅で待ち合わせて、 一緒に無言堂に行く約束だ。
 水墨画の特別授業が行われるのだが、
 絵画科のおまけで うちの科も受講することになった。
 いまどき水墨画? という気がしないでもないが、
 基礎的な技術や 技法や 概念構成やらは 現代絵画の発想にも役立つとかで、
 静かだが根強い人気があるらしい。

「せっかくの機会だからね。
 あんたたちは ひよっ子なんだから、
 飲み込めなくても 消化不良を起こしてもかまわないから、
 今のうちに 何でも齧(かじ)っておくのよ」
 加太和布教授の容赦ない叱咤激励に追われた。

 用意するのは 筆と墨汁と紙だが、
 筆は、 ほとんど使っていないのが一本、 何故か家に転がっていたのがある。
 墨汁は 近所の文房具店でも簡単に手に入る。
 問題は紙だった。
 水分を含みやすく柔らかで、 その上 濡れても破れないように、
 長い繊維を漉いた 古式製法のものが必要だった。
 学内の購買でも扱ってはいたが、
 在庫が少なくて、 あっという間に売り切れたのだ。
「特別授業があるなら、 連絡をくれれば手配しておいたのに」
 と、 購買部のおばさんは怒ったというが、 後の祭りだ。
 もう間に合わない。
 旬末のうちに買いに行くことにした。

 地下鉄駅の前で待っていると、 星来が時間通りにやってきた。
 早く来て待つのも、 遅刻して待たせるのも嫌いなのだという。
 そんな訳で、 いつもぴったりの時間に現われる。
 何故そんな奇跡のような真似ができるのか感心する。
 私はというと、 早く着きすぎるか 遅刻するかのどちらかだ。

「そういえば、 いつも段取りの良い星来が 画材を買い損ねるなんて珍しいよね」
「いや、 買ったよ」
「ええー、 じゃあ付き合わせて悪かったね、 ごめん」
「ついでに買いたいものがあるから、 かまわない。 それに、
 どうしても買いに行く時間が無いから、 倍の値段を出しても欲しい という学生に売った」
「倍の値段で?」
「いや、 二割り増し。 大割引だ」
「学校で商売しちゃったんだ」
「人助けかな。
 欲しがる人間が居て、 必要なものを提供する。
 世の中の役に立つからこそ 商売だって成り立つ。
 そのために使った労力に 対価を求めるのは当たり前だ」

 星来の話を聞いていると、 正義を語られた気がする。
 そんな星来に声をかけてくる 勇敢な青年たちを追い払いながら、
 無言堂に たどり着く。



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