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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 1-17

 そこに バタバタと入ってきた人物がいた。
 ビン底眼鏡の 干からびたおばさんである。

 一つ瞬きをして、 こう言った。
「……オノコロちゃん。 私、 何をしに来たのかしら」
「さあ、 もしかして 講義の資料を取りに来たのでは。
 私はオノゴロです。 コロではありません。
 何度言ったら 分かってもらえるのでしょうか」
「ああ、 ではゴロちゃん。 ありがとう。
 多分そのようだ。 ちなみに 私は昼飯を食べただろうか」
「ガッツリ召し上がっていましたよ」
 そそくさと散らかった机に向かって行き、 資料をつかむと、
 唯一わずかに空いた壁に架けられた 小さな花の絵に顔を近づけて 満足そうに眺め、
 バタバタと出て行った。

「あの人が、 この研究室の五所川原教授です」
 ゴロちゃんが げんなりした顔で、 すでに居なくなってしまった人を紹介したが、
 加太和布先生は聞いていなかった。
「すごいものを持ってるのね。 これ伎観の本物よ」

 達磨坂も吸い込まれるように近づいて、 ボソリと推定価格を口にした。
 それを聞いたゴロちゃんが 唖然として口を開ける。
 蒲公英を描いた さりげない小品だが、 保存状態も良く、
 巨匠伎観の本物なら とんでもない貴重品だ。
 ガラクタだらけの部屋の、 汚れた壁に架けておくにはもったいない。

「ええーっ、 そんな小さな絵が 盗まれた機械より高いんですか。
 でも、 貰ったって言ってましたよ」
「くれる人がいるなら、 あたしも貰いたいもんだわね。
 買おうと思ったところで、 買えるものじゃないわよ。
 第一、 一度手に入れたら、 持ち主が おいそれとは手放さないわよ。
 どんな人がくれたのかしら」

「知らない人だそうです。
 先旬、 ちょうど高周波切断機が盗まれた頃だったと思いますが、
 先生の信奉者だという二枚目に 貰ったといっていました。
 いいんでしょうか、 こんなところに置いておいて」

「時期が同じというのが気になりますね。 出所を調べてみましょう。
 その人物の人相を 教授にも聞いてみないと」
 達磨坂が 警官らしい発言をした。
「無理だと思います。
 『不細工は 特徴がはっきりしているけど、
 二枚目って どうしてみんな同じように見えるのかしら』
 って言ってましたから。
 ど近眼ですし」
 ゴロちゃんのすまなそうな声に続き、 達磨坂の深いため息が聞こえた。

 研究室を後にしたとき、 無理やり鞄持ちにさせられたのは、
 ヘタレの鈴木愛のせいばかりではないことが判明した。
 やっぱり 二人とも神出鬼没の美青年が気になっていたのだ。
 屋上の自殺未遂救助の件を またもや話す羽目になった。

 しかしそれ以上は、
 私だって いくら根掘り葉掘り問い詰められても、 知らないものはどうしようもない。
 どうせ 何を訊かれても答えられないのだから、 できればそっとしておいて欲しい。
 たった二度、 訳も分からず命を助けてもらっただけの関係なのだから。

「ちょっと、あんたねえ、 命の恩人なんでしょ。 立派な関係じゃないの。
 そんじょそこらに転がっているような関係じゃないわよ」
「それも 一度ならず二度までも。
 一度だけなら 偶然と言い張っても許しますが、
 二度ということなら、 もはや偶然とは言いがたい。
 二度あることは三度、 とも言います。
 今度出会ったら 必ず何者なのか突き止めてください。
 気になってしょうがない」

 三度も命の危険にあってたまるものですか。
 都合よく忘れているのかもしれないが、 二度目はあんたらのせいだ。
 もう、 無い無い。
 私は、 のんきに暮らす平凡な一般人なんですからね。

          第二章につづく


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