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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 1-10

 第一次接近遭遇は 昨日の午後、
 大教室で 教育学の授業を終えた後のことだった。
 教育学の開祖のペスタロッチンチンとかいう先生が、
 貧しい子どもたちを 如何に愛情込めて教育したか というどーでもいいような話を、
 寝ぼけながら聞き流し、 やっと開放されて 眠気を覚まそうと屋上に出たのだった。

 伸びと欠伸(あくび)を両立させながら、 風に吹かれて ちんたらぶらついていると、
 鉄柵に脚をかけて 身を乗り出そうとジタバタもがいている男子が目に入った。
 向こうも足音に気づいたのか、 振り向いたところで目が合ってしまった。
「こんにちは」
 挨拶したのは、 ほかに台詞(せりふ)を思いつかなかったからに過ぎない。

 男子は固まってしまった。
 そのまま通り過ぎるのもお愛想無しかな、 と思ったので、
 近くに行って
「気持ちの良い風だよね。 やっと眠気が覚めた。
 何か面白いものでも見えるの?」
 当たり障り無く 世間話でお茶を濁し、
 穏やかな日常に埋没しようと話しかけたら…… キレタ。

「き、君は、 僕の深遠なる不幸を、
 鬱勃たるパトスを 嘲(あざわら)いに来た悪魔か」
 気に障ることが有ったらしい。
 ここはひとつ 謝って撤退しよう。
 座右の銘は、 世渡り上手だ。

「ごめんなさい。 そんなに ご大層な者ではありません。
 失礼しました」
 踵を返そうとした時、 さらに激昂したらしい男子は つかみかかってきた。
「ぅぅううううう…… 何しに来たんだ! 
 ぼ、僕の、 大いなる絶望は…… 何処だあ。
 ううう……うううううう」
 唸り声と 私を引っ張る力が増してゆく。

「足場が悪いし、 ここは屋上だから 暴れると危険です」
 きっぱりと言ってやった。
 その途端、 状況を把握したらしい。
 しかし、 それが悪いほうに作用してしまった。
 均衡を崩して、 体のほとんどが空中に乗り出す形になった。
 まったく無茶をする。
「きゃあああああっ」
 素晴らしい悲鳴を上げた。

 腕をつかんで 引き上げてやろうとしたのに、 すっかり混乱したらしい。
 暴れた。
 結果、 男子は柵の内側に倒れたが、 私が外に押し出された。
 柵をつかんではいたが、 足の下には触れる物が何も無い。
 宙ぶらりんだ。 叫ぶのは私の番だった。
「うぎゃあぁ」



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