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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 1-6

 一階まで降り、 さっさと出口に向かう二人を あわてて追いかけた。
 先生のくそ重い鞄をもてあましながら、
 カタログを仕舞おうと もたもたしているうちに 遅れを取ってしまったのだ。
 焦る。
 見ると、 もう 空走車に乗り込むところだ。
 置いていかれて堪るものか と猛然と走った。

 すると 何を勘違いしたのか、
 集音機を持ったお兄さんと 撮影機を抱えたお姉さんが、 後を追いかけて突進してきた。
 しかし、 そんなものを かまっている暇は無い。
 後部座席に飛び乗ると、 待ってましたといわんばかりに 空走車は空に飛び上がった。

 宙に浮いているような 不思議な乗り心地だ。
 あら、 本当に宙に浮いているんだった。
 今日は 初物尽くしの とんでもない一日だ、 としばし感動に耽ったが、
 それは大間違いだった。
 平和でのんきな学生生活は どこに行った、 と嘆くべきだったのだ。

 飛び上がって いくらも経たないうちに、 騒ぎは起こった。
「クリちゃん、 なんか追いかけてきているわよ。 あれはなあに」
 うしろを振り向いた加太和布先生が 不安そうに声をあげた。
 そうだ、 空走車を持っているのは 公共機関だけではなかった。
 当然のことながら、 大手の、 マスコミ関係だって持っている。
 青いのと黄色いのが 二台追走してきていた。
 達磨坂が チラリと私に振り返り、 嬉しそうに笑った。
「では、私の華麗な運転技術を お目にかけましょう」
 いや、見たくないし、 という隙間も無く、 空走車が急転回した。
 嘘―っ、 これが噂のカーチェイス? 
 映画やテレビドラマでしか見たことないし、
 自分でなんか やりたくないから、 お願いやめて。

「きゃあ、 クリちゃんカッコイイわあ」
 黙れ、 くそ狸。
 止めてよ。 乗り心地がどうのこうのと言っている場合じゃなくなった。
 せっかく上空から見る胡枇の風景だというのに、
 右に左にめまぐるしく流れて 楽しむどころじゃない。
 挙句、 上になったり下になったり、 ぐるぐる回ったりされては 生きた心地さえあやしくなる。

 やっとまともな位置に 景色を認識した時、
 前方に見えたのは、 延々と集合住宅が立ち並ぶ巨大団地、 太加島平だった。
 胡美芸とは 全くの逆方向だ。
 送ってくれるはずじゃなかったのか。
 何処に連れて行くつもりなんだ、 降ろしてー。

 そんなことにはお構いなしに、 空走車は 行儀良く並んだ高層集合住宅の谷間に突入して行った。
 もう追いかけてこないんじゃないか と後ろを確かめたが、
 黄色いのが しつこくくっ付いて来る。
 林立する建物の間を縦横無尽にくぐり抜け、
 二台の鬼ごっこは 収まりそうも無い。
 空中衝突を避ける為に、 対物探知機と回避設定があるとは 噂に聞いているが、
 本当に大丈夫なんだろうか。
 機械ものには、 てんで詳しくないのだ。
 半ば本気で 神様に無事を祈り始めた時、
 前窓に 何かがぶつかって飛び散った。

 土…… と…… 赤いバラ? 
 えっ、 回避設定は?



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コメント
3011:くそ狸で吹いた by アマノジャック! on 2015/06/10 at 02:37:14

タイトル通りくそ狸の所で吹いてしまいました。テンポよく主人公の平和が壊れていってる感じが面白かったです。
この事件の予想外の展開に期待しています!

3014:Re: くそ狸で吹いた by しのぶもじずり on 2015/06/10 at 10:16:10 (コメント編集)

アマノジャック様こんにちは。
笑っていただけたようで、うれしいです。
ご感想を寄せてくださる方は、私の宝物です。
ありがとうございます。

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