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赤瑪瑙奇譚 第七章――6



 メギドは 驚愕していた。

 この食事会と寝室を所望したのは、 ツクヨリなのに、 突然、 何を言い出すのだ。
 末娘を王妃にしたくはないか と誘っておいて、 いまさら切り捨てるつもりか。
 あれこれと力を尽くし、 これまで 随分と役に立ってきたはずだ。
 なのに、 この小僧は わしをコケにしたのか。
 くそっ、 何を考えている。

 頭の中には 言いたいことが 山ほど駆け巡っていたが、
 口に出せたのは、 一言だった。
「知らん。 わしは 謀反など 知らんぞ!」

 わめくメギドを 冷ややかに見据えて 、ツクヨリは 怒りに燃えていた。

 計画が狂った。
 兄上が来たりするからだ。
 兄上さえ この場にいなければ、 さりげなく現れて、
 食後の酒に こっそりと眠り薬を入れ、 ユキア姫を 我が物にしてしまえたものを。

 何処まで 私の邪魔をするつもりだ。
 たまたま 先に生まれた というだけで、 何故 カムライが皇太子なのだ。
 ただの戦(いくさ)馬鹿が、 何故 マホロバの姫まで手に入れる。
 許さない。

 荒れ狂う心を 優しげな顔に隠し、 ツクヨリは 部屋に踏み入った。

「証拠があります。 あなたの部屋で 見つけました」
 懐から、 布袋を取り出した。

 メギドは、 バカの一つ覚えのように わめき続ける。
「知らん、 わしは知らん。 翠玉の首飾りなど 知らんぞ」

 他の全員が、
(あちゃー、 やっちゃった) と思った。
 目に見えているのは、 ただの布袋。
 中に 首飾りが入っている などとは、 持ち主にしか 分からない。

 ツクヨリが、 ゆっくりと袋を傾け、 しゃらりと 首飾りが姿を現した。
「あなたが盗ませた ユキア姫の 首飾りですね」
 言いながら、 ツクヨリは 金の鎖を 左の手首に 幾重にも巻きつけ、
 まるで 腕輪のようにして 掲げて見せた。

 重たげに下がった 『妖精王の瞳』が、 大きな蛍ででもあるかの如くに 瞬く。
 そして、 異変が起きた。

 優しく、 どこか悲しげだった ツクヨリの面差しが、
 悲しみだけを強く残して、 俄かに 夜叉に変じた。

 嫉妬に狂った夜叉の姿が、 壁の鏡に いくつも映し出された。
 メギドの妻と長女が、 喉が張り裂けんばかりの悲鳴を上げる。
 末娘は 呆然と見入るばかりだ。

 皆の様子を 不振げに見ていたツクヨリも、 やがて 己が姿を映す鏡に 気づいた。
 人の動きにつれて 揺らめく明かりが、 さらに怪しく 夜叉を映し出す。


「久しく眠っておった『妖精王の瞳』が 目覚めたな。
 身に着ける者の 真の姿を見せる。 宝玉の力じゃ」

 イマナジが、 うっすらと笑みを浮かべ、 モクドの宝だった 翠の玉を、 感慨深げに見ていた。


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