RSS

ずぼらなユン、やぶれかぶれ 1-5

 私たちが入ったのは 出口だったらしい。
 最後に、コメダワラの顔写真と 経歴年表が掛けられている。
 結局、一枚を残して 全作品が被害にあっていた。

 無事な一枚は、 年表の隣に掛けられた小さな油絵だ。
 普通に布のキャンバスを使っている。
 他とは違い、 その作品だけ古風な画法で、
 赤茶けた表紙の手帳と 短くなった鉛筆が描かれている。
 署名が無ければ コメダワラとは思わないだろう。
 無事でよかった。 これは好きだ。

 使い古したらしい手帳には、
 楽しい思い出や、 お気に入りの冗談や、
 大事な明日の予定なんかが書いてありそうな気がする。
「へえ、 こんな絵も描くんですね」
 達磨坂が感心している。

「もともと こういう絵を描く子だったのよ。
 でもねえ、 この手の作品は、 なかなか売れないのよねえ。 残念だけど。
 展覧会には いつも一枚だけ、 ドサクサ紛れに出すらしいわ」
「なるほど、 評価されにくい絵ですね。
 それはともかく、ここまでするには 犯人もずいぶんと時間がかかっているでしょうね」
「やっつけ仕事じゃないのは確かね。
 悪ふざけの悪戯や、 恨みとか 単なる嫌がらせにしては、 仕事が丁寧すぎる。
 どんな犯人なのか 興味が湧いちゃうわ」

 そこに警官が来て、 達磨坂に報告をした。
「警部、 コメダワラ画伯は、悶絶した挙句倒れましたので、 病院に運びました。
 落ち着くまで 事情聴取は無理だと思います」
 へえ、 クリちゃんて けっこう偉かったんだ。
 侵入経路がまだ不明だの、 犯行時間がどうのこうのと 警官は報告を続けていたが、
 私は カタログに記入したばかりの線を眺めていた。

 どれも 最近のコメダワラ作品の特徴とも言える部分が 切り取られている。
 赤と白の横縞シャツを着た ひょろ長い男、
 どういうわけか いつも毛糸の帽子を被っている青年が、
 まるで登録商標のように 画面の目立たないところに描かれていて、
 彼を探すのも コメダワラ作品の人気の一つになっているのだが、
 切り取られた部分には 必ず彼が含まれているみたいだ。
 事件と関係があるのだろうか。
 おお、 私ってば探偵みたいだ。
 一人悦に入っていると、 加太和布先生が覗き込んできた。

「珍しく面倒なことを熱心にやっているわね。
 気の利いたことをしていると思ってるでしょ。
 でもそれくらいのことは、 クリちゃんがきれいにまとめて、 捜査資料としてくれるわよ。
 残念、 骨折り損ね。 警察のすることを甘く見ちゃ駄目よ。
 それより まだ捜査中だから、 それを むやみに人に見せるんじゃないわよ。
 分かってる?」
「は~い」
 とりあえず返事をしておこう。
 私が人生の指針として目指すのは、 世渡り上手。

 そうこうしているうちに、 業務連絡を終えた達磨坂警部が 私たちのところへ戻ってきた。
「お二人を大学まで送りますよ。
 先生、 コメダワラの学生時代の記録を見せてください」
 げっ、 コメダワラって 胡美芸出身なんだ。
 そう言えば、 加太和布先生の教え子だって言っていたっけ。 へえ。



戻る★★★次へ

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
2610: by LandM on 2014/11/06 at 19:59:04

題材は・・・大切かもしれませんね。
小説を書いているといまいちなのですが。
絵にとって、タイトルは魂ともいえるかもしれませんね。それほど、絵を見る人に意味を与えるような気がします。

2611:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2014/11/07 at 10:38:03 (コメント編集)

あちゃ~、絵のタイトルを考えていませんでした。
今、あわてて考えても、クサイ題名しか思いつきません。
どうしましょう。
良いのを思いついたら、あとでコッソリ入れたりして……。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア