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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 1-4


「……虚維の発言に 一票」
 思わず出た一言に、 加太和布先生が すかさず応えた。
 先生に認められた。
 初体験だ。

 しかし 私じゃなくても、 多分 他に言う言葉が無い。
 展示されたコメダワラ作品の全てが、 一部切り取られていた。
 少なくとも 見える範囲にある作品は全部だ。
 しかも、 一つ一つが鋭い切り口で 丁寧に切り抜かれている。
 いい仕事だ。
 私みたいなのが描いた絵でも、 勝手に手を入れられたら頭にくるくらいだ。
 一応 人気作家であるコメダワラの怒りを思うと、 さすがに同情してしまう。

 ……………… だけど。
「あらステキ。 いいわね。 アートだわ。
 こっちのほうが断然いいわ」
 言っちゃいましたね。
 加太和布先生の意見に 一票。

 うざったい、 気に入らない と思っていたコメダワラの作品が、
 すっきりした感じの 謎めいた魅力を醸し出していた。
 これはこれで、 作者が頭にくる事態に違いない。
 ちょっと思いついた事があったので、 ダメモトで言ってみた。
「あのう、 クリちゃんさん、 展覧会カタログをもらえないでしょうか。
 どうせ展覧会は中止だし、 無駄になると思うんですよね」
「聞いてみましょう。
 申し遅れました。 達磨坂(だるまざか)栗衛門(くりえもん)、 二十八歳。
 ちなみに独身。
 クリちゃんでもいいですけどね」

「虚維弓月(ゆづき)、 十六歳。
 普通に独身」
「おや、 助手かと思ったら学生さんでしたか。
 どうりで ピチピチしている」
 なんか、 親父くさい言い方だ。
 紫外線で色が変わる眼鏡だったらしい。
 色の無くなったレンズの奥は、 切れ長のきれいな目をしていた。
 手品師みたいに優雅な手つきで 名刺を取り出すと、
 人差し指と中指ではさんで差し出し、 片目をつぶって微笑んだ。
 声は悪くないが、 名前が痛い。
 ウィンクが上手いのは ちょっと口惜しい。

 以前 鏡の前で練習したけど、 どうしても もう一方の目が糸目になってしまって、
 単に目を閉じたようにしか見えない私としては、 むっとしてしまう。
 かなり訓練したに違いない。
 名刺を見ると、 美術品や骨董品の関係する事件を 専門に担当する捜査官らしい。
 加太和布先生が 他の事件でも 協力したことがあったんだろう。

 デパートの社員らしき人と交渉しに行って戻ってくると、 私と先生に一冊ずつカタログをくれた。
 斜め掛けにしていた自分の肩掛け鞄から ペンを出し、
 先生の重い鞄をもてあましながら 作品と照合して、 切り取られた部分に線を入れていった。
 本当に どれも絶妙な切り取り方だ。
 時間がかかっただろうなあ。 ご苦労様なことだ。
 あれっ、 時間がかかったどころの騒ぎじゃない。
 コメダワラ作品は、 凹凸の付いた金属板に描かれている。
 どうやって切ったんだろう。
 塗料だか絵具だかにも、 ひび割れさえ見当たらない。
 神業だ!


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