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赤瑪瑙奇譚 第七章――5



 お茶会の翌日に、 あらかじめ予定されていた 晩餐の招待があった。
 メギド公からの招待である。
 まだ 噂は広まってはいなかった。
 ウガヤ厳選のおしゃべり達は、 必死に 我慢の限界と戦っていた。

 だから、 ユキアと共に カムライが現れた時、 メギド公は いたく驚いた。

「ユキア姫の護衛についてきました。 護衛兵とでも思ってもらえばいい。 気遣いは 無用です」
「いいえ、 そうもいきません。 しばし お待ちください」
 ユキアが、あたふたと引っ込む メギド公を 目で追っていると 、
 廊下の端に ちらりと動いた人影に気付いた。

 メギド邸に ぶらぶらと居ついてしまった モクドの巫女 イマナジが、
 ユキアに もう一度会いたい というのが、 その日の 招待の理由だったが、
 他にも 何かありそうな、 かすかに不穏な気配がした。

「席と料理を 一人分追加じゃ、 はようせい」
 がさつな怒鳴り声が、 奥から聞こえた。

 貴賓室と呼ばれているらしい小部屋に通される。

 窓がほとんど無く、 壁には 何枚もの鏡が 飾られていた。
 すっかり日が沈んで、 一つしかない小さな窓も、 外は暗闇で 何も見えない。

 モクドの巫女、 メギド公と妻、 妻の複製かと思うほど そっくりな長女、
 そして、 十人前に毛の生えた といわれている末娘が参加した。
 何処かしらの鏡に 不細工な母子が映りこんで、 なかなか 圧倒される光景になっている。
 料理は、 料理好きの末娘が、 つい先ほどまで 調理場で采配を振っていたものだという。



 食事会は、 ある人物に頼まれて開いたものだった。
 食事会と寝室を一つ用意してくれ と言われて、 どんな目論見かも聞かずに引き受けた。

 が、 メギドにも思惑がある。
 巫女のイマナジが 末娘に会って、 いい人相をしている と言ったのだ。
 一国の民の心を、 それも マホロバのような大国の民心を、 その手中に握ることが出来る相だと。
 もしも、 あっちが失敗しそうになったら、 乗り換える手もあるかもしれない。
 メギドにしては珍しく、 大雑把ながらも 布石を打とうとしていた。

「殿下、 腰のものを 衛士にお預けください」
「わたしは、 姫の護衛に来ている。 剣が目障りなら、 部屋の隅に退いていよう」
 カムライの鋭い視線に、 メギドは逆らえない。
「いえいえ、 かまいません。 どうぞ席に」
 あたふたしながら、 自ら席に案内した。

 食事が始まった。
 工夫の凝らされた料理で、 味も洗練されている。 料理好きを自慢するだけのことはあった。

「今日は 翠玉の首飾りは、 なさっておられぬのじゃな。 残念。 拝見したかったのだが」
 巫女のイマナジが言うと、 メギドの手が ぴたりと止まった。 明らかに怪しい。
「失くしてしまいましたの。 わたしも残念です」
 あとは、 もっぱら 出てくる料理の話に終始した。

 ある料理が出たところで、 ユキアの眉が わずかに顰められた。
 が、 陽気な口調で 隣のカムライに 話しかける。
「あら、 殿下のお皿には 茸がついているのですね。 私のお皿には 無いわ」
「茸……、 そんな勝手なことを 誰が……。 わたしの献立には 入れていなかったのに」
 末娘が、 小さな声で 不思議そうに呟いた。

「殿下、 お皿を替えてください。 わたし、 茸が食べたいわ」
 言って、 ユキアが強引に 皿を取り替えた。
 口に入れようとした、 その時、

「いけません!  ユキア姫」
 ふらりと ツクヨリが現れた。

「それは 毒キノコです。 メギド公が、 謀反を企んでいます」

 メギドの顔面が、 みるみる蒼白になっていく。
 何か言おうと口を開けるが、 ぱくぱくと金魚のように動くだけで、 声も出ないらしい。


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