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ずぼらなユン、やぶれかぶれ 序ー2

 星来とは、 初等学校に入学した五歳の時から 仲良しだ。
 初等学校の六年間と 上級学校の五年間を ほとんど一緒に過ごし、
 専門大学校まで一緒になった。
 人生十六年の内、 十一年を共に過ごしている勘定になる。

 よく、 美人の隣には引き立て役のブスがくっついている といわれる。
 確かに、 星来は誰が見ても とびっきりの美形である。
 しかし、 自分をブスとは思いたくない。
 毎日鏡で出会う顔には、 それなりに愛着がある。
 せめて 十人並みということにしておいて欲しいものだ。

 見た目だけではなく、
 さらに勝てないのは、 星来は いいとこのお嬢様だったりする。
 しかも由緒正しい とびっきりの家柄だったりするのだ。
 大昔の貴族まで系図がたどれるらしい。
 歴史の授業で聞いたことがある 麻本呂婆(まほろば)王国の貴族なんだそうな。
 星来に言わせると、
「貴族って言ったって、 バッタモンよ。 金で位を買ったらしいから」
 そこまで詳しく分かっているだけでも すごい。
 はばかりながら、 こちとら 先祖が何処の馬の骨やら ロバの耳やら分かったもんじゃない。
 うわあ。 ロバの耳だったらどうしよう。

 ということで、 大手の画材店へと向かう二人だった。
 私たちは 真秀良(まほら)の首都である 胡枇(ごび)の東、
 町外れに位置する 極めてマイナーな専門大学校、
 胡枇の木芸術大学校の学生だったりする。

 芸大といっても 落書きと鼻歌以外 たいした取り柄の無い暇人の集まりといっていい。
 この際だから きっぱりと言い切ってしまおう。
 暇人の集まりだ。
 だからなのだろか、 専攻に関係なく、 好き勝手をやっている学生は珍しくない。
 特に、 私が専攻している 美学・美術史科は、
 あれこれと食い散らかすように 実技も受講できるから、 なおさらだ。

 大学の購買部に基本的な画材は揃っているが、
 基本的な物しかない というのが致命的だった。
 色の幅を広げようとか、 かわった工夫をしようとか考えると、 どうやったって物足りない。
 購買部だけ まともな芸大風でも、 役には立たない。

 私は正直、 入学する前は ほとんど油絵を描いたことがなかったが、
 授業で描くようになってみると、 油絵って 扱いやすい画材だと思うようになった。
 ここは違うなって思ったら、
 その部分だけ上から塗りつぶしたり 描き直したり出来るところが楽だ。
 水彩では、 一度気を抜いて走ってしまった筆は 引き返せない。
 何とかしようと こねくり回してドツボに嵌ると、 クソ気味の悪い出来になったりする。
 その点 油絵は、
 時間を掛けて あれやこれやと悩み迷いながら描き進められるところが大いに違う。
 だから、 描くときの意識がまるで違うことが面白い。

 で、今、私は ペインティングオイルに凝っている。
 大型画材店には びっくりするほど種類が揃っているのだ。
 油絵は、 絵の具を 水ではなくて 文字通りオイルで溶く。
 使うペインティングオイルによって 絵の具の質感や発色が 微妙に変わったりするし、
 乾き具合や保存状態が違ったりもする。
 長く油絵を描いている人には いまさらなのかもしれないが、
 油絵初心者の私には 新鮮な楽しみの一つだった。
 その日も コレクションを増やそうと、 心ひそかに……
 別に おおっぴらでもかまわないのだが、 オイルを求めて画材店へと旅立ったのであった。

 そう、 私といえば、
 芸大生としても 決して将来を嘱望される逸材というわけでもなく、
 ただ面白おかしく絵を描いて遊んでいるだけの遊び人 というか、
 とびきり目立つ友人、 星来に おまけのようにくっ付いている、
 まるで目立たない 正真正銘・完全無欠・紛れもなく 一般小市民である。
 まあ、 胸を張って言う事でもないんだけどね。


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コメント
2574: by LandM on 2014/10/15 at 07:44:32

確かに購買部は少ないですからね。
そういうところに行かないと。
なんだろうか。美術の苦労がしみじみと伝わってくるところがいいですね。

2575:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2014/10/15 at 17:35:17 (コメント編集)

日本の大学の購買部も、あんまり役に立たないことが多いですね。
この世界も似たようなものだとお考えください。

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