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赤瑪瑙奇譚 第七章――4



 三日後に、 ユキア主催の お茶会が催された。

 こうした行事のために用意されている 迎賓館の特別室に、 招待客たちがやってきた。
 急遽使いが来て 招待されることになった 高官や 町の有力者夫妻の何組かが、
 出迎えたユキアに挨拶をしては 席についていく。

 上品に取り繕ってはいるが、 時折盗み見るような視線に、 押さえきれない好奇心が見え隠れしていた。
 ほぼ全員が、 例の噂を知っている。

 カムライが 入ってきた。
 略式ではあるが、 正装に近い凛々しいいでたちに、
 自分の衣装を 心配そうに見直していたりする招待客もいる。
「本日は ご招待いただき、 ありがとうございます」
 まっすぐに、 ユキアに対した。
「お越しいただき、 恭悦に存じます」
 ユキアが返して、 そのまま 見詰め合う形になった。

『為すべきことを してください』
 メドリを通じて届けられた伝言は、 そっけないほどに つれない一言。
 それきり ユンは姿を現さない。
 ホジロは 逃げた。

 一国の皇太子である。 カムライは おのれの責務を 重々承知していた。
 承知していながら諦めきれない想いだったのだ。
 しかし、 さすがに、 もう道は無い。

 カムライは、 為すべき事を為しに来た。

 短い周期で しかも重なっていたりもしたが、 心奪われる女性に 立て続けに出会ってしまった 遅い春。
 初恋は 成就しないものだ と誰かが言っていた。
 二度目の恋を成就できる自分は、 幸せなのだろう。
 自分だけではなく、 目の前の この人も幸せにしよう。
 二人で一緒に 幸せになろう。

(さようなら、 ユン……)

 一瞬、 谷間に咲く百合の花を思わせるような、 はかなげな表情が 浮かぶが、
 ユキアの ふんわりとさりげない笑顔に励まされて、 カムライは 口を開いた。

「ユキア姫、 わたしと結婚していただけますか」
 突然の、 思いもよらぬ求婚に、 会場が 静寂に包まれた。
「はい、 喜んで お受けいたします」
 恥ずかしそうな笑顔で答えた 一拍の後、 祝福の声と 喜びの歓声に、 会場が騒然となった。

 招待客は、 ウガヤが検討の上、 選んでいた。

 日ごろから 顔が広いことを自慢する人、
 知っている事はもちろん、 よく知らないことまで話したくて仕方がない おしゃべり、
 噂が三度の飯より好きだ と公言する人、
 そういう人たちが このお茶会の 招待客だった。
 さらに、 給仕や 世話係についている使用人たちも、 ひそかに同じ基準によって 選ばれていた。
 彼らが、 目撃した 世紀の瞬間を 黙っていられるわけが無い。

「公式発表されるまでは、 まだ 他の方々には言わないでください。
 コクウの王子と マホロバの姫ともなれば、 本人同士の意思だけでは 話が進みません。
 国家間の交渉が必要になります。
 上手く事を運ぶ為に、 くれぐれも、 まだ内密にしておいてください」
 と釘を刺されたが、 彼らにとっては 拷問に等しい。
 いつまで持つやら 見ものであった。

 当日と翌日は、 かろうじて持ちこたえていたらしい。
 中には、 自室に鍵をかけて 閉じこもり、 七転八倒していた者もいたとか、 いなかったとか。
 町外れの山に入り、 大木の根元に 穴を掘って 叫んだ者がいたとか、 いなかったとか……。

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コメント
215: by 十二月一日 晩冬 on 2012/06/27 at 19:42:10

それは想像を絶する苦痛だったに違いない・・・
話したくて仕様がないのに、喋れないって物凄いエネルギー消費しますよね
話すより沈黙している方が疲れることの典型だと思ったり思わなかったり・・・ww

216:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/06/27 at 22:07:35 (コメント編集)

やはり 私は ドSでしょうか。

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