姫様爆走中 7
「うん、 暑気払いにもなるであろう。
疲れた時は、 その酸っぱさが ちょうど良い」
涼しい顔で、 さらに二三本差し出す丙姫を、 睨む気力もない。
(ぜーったい、 城に着いたらぶち殺す。
ぼっこぼこにして、 切り刻んでやる)
頭の中では 威勢の良い罵詈雑言を連発している口に、
丙姫が、 親切にも 草の茎を突っ込んだ。
なさけなく顔をしかめて 草を齧らされる山田屋だった。
もはや 周囲の観察どころではない。
すぐだと言ったはずなのに、 またもや険しい斜面になり、
空腹をこらえて 山肌を這うようにして進んだが、 なかなかたどりつけなかった。
「すぐって言ってなかったか。 言ったよな」
「そちがいなければ、 とっくのとうに着いておる。
途中で置いて行ったりはせぬ。 日暮れまでには間に合うじゃろ。
しかし、 問題は発声練習じゃ」
山田屋の脳内に、 再び罵詈雑言が駆け巡った。
あふれそうだ。
(昼飯も食ってないのに、 日暮れまで歩くだとーっ。 聞いてないぞ)
が加わった。
やがて、
「ほれ、 あそこが城じゃ。
ぎりぎりかな。 発声練習しながら行くか」
やっと 城の一角が見えた時、
精も根も付き果てた凶悪犯は、 山田屋の仮面を脱ぎ捨てることにした。
どうせ たいした役には立っていない。
場所が分かれば、 娘は用済みだ。
お気楽そうな金太郎眉毛が、 わざわざ殺さなくてはならぬほど、
この先の 逃走の障害になるとは思えないが、
クソ酸っぱい草を齧らされ、
吐きだすこともできないうちに、 無理やり追加の草を口に突っ込まれたのだ。
あの屈辱と恨みは 晴らしておきたい。
懐に手を入れ、 匕首をつかんだ。
使いなれた凶器が、 ぴたりと手に収まる。
戻る★★★次へ

疲れた時は、 その酸っぱさが ちょうど良い」
涼しい顔で、 さらに二三本差し出す丙姫を、 睨む気力もない。
(ぜーったい、 城に着いたらぶち殺す。
ぼっこぼこにして、 切り刻んでやる)
頭の中では 威勢の良い罵詈雑言を連発している口に、
丙姫が、 親切にも 草の茎を突っ込んだ。
なさけなく顔をしかめて 草を齧らされる山田屋だった。
もはや 周囲の観察どころではない。
すぐだと言ったはずなのに、 またもや険しい斜面になり、
空腹をこらえて 山肌を這うようにして進んだが、 なかなかたどりつけなかった。
「すぐって言ってなかったか。 言ったよな」
「そちがいなければ、 とっくのとうに着いておる。
途中で置いて行ったりはせぬ。 日暮れまでには間に合うじゃろ。
しかし、 問題は発声練習じゃ」
山田屋の脳内に、 再び罵詈雑言が駆け巡った。
あふれそうだ。
(昼飯も食ってないのに、 日暮れまで歩くだとーっ。 聞いてないぞ)
が加わった。
やがて、
「ほれ、 あそこが城じゃ。
ぎりぎりかな。 発声練習しながら行くか」
やっと 城の一角が見えた時、
精も根も付き果てた凶悪犯は、 山田屋の仮面を脱ぎ捨てることにした。
どうせ たいした役には立っていない。
場所が分かれば、 娘は用済みだ。
お気楽そうな金太郎眉毛が、 わざわざ殺さなくてはならぬほど、
この先の 逃走の障害になるとは思えないが、
クソ酸っぱい草を齧らされ、
吐きだすこともできないうちに、 無理やり追加の草を口に突っ込まれたのだ。
あの屈辱と恨みは 晴らしておきたい。
懐に手を入れ、
使いなれた凶器が、 ぴたりと手に収まる。
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