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赤瑪瑙奇譚 第七章――1



「ユキア姫を救い出したのは、 ツクヨリだったのか……」
 カムライの報告を受けて、 カリバネ王は 絶句した。

 人払いをして、 部屋には 二人きりだった。
 王は苦悶の表情で、 カムライは どこか泣きそうな顔で、 沈黙が長く続いた。

王の密命を受けた手だれが探しても、 一晩以上かかった探索である。
たった一人の衛士だけを伴って、 あっさり見つけた意味を、 見逃すわけにはいかなかった。
「単に ユキア殿が好きになったというだけならまだしも、 やり口を見れば そうではあるまい。
 平気で 姫を危険にさらしているように思える」
「……」
「カムライ、 おまえが姫を守れ。 それしかあるまい」


 就寝前にメドリが戸締りをし、 廊下の様子も確認しようと 扉を開けると、 カムライがいた。
「殿下!  なんですの、 こんな夜遅くに」

「うむ、 ユキア姫の護衛をしに 泊り込むことにした。
 向かい側の部屋にいるから、 何かあったら いつでも呼んでくれ」

「殿下がじきじきに護衛ですか。
 まあ、 昔話でも、 姫君を守るのは王子様 と相場が決まっていますけど、
 向かいの部屋は、 窓も無いような召使用の部屋ではありませんでしたか」
「寛ぐために泊まる訳ではないから、 それでいいのだ」
「では、 姫様にも そのようにお伝えします。 お休みなさいませ」


「おはようございます。 殿下」
「メドリ、 なにがあった!」
 カムライの部屋を訪れたメドリに、 噛み付きそうな勢いで 返事をする。

「わっ、 大丈夫です。 何もございません。
 朝ごはんがまだでしたら、 ご一緒にどうですか と姫様が……、
 是非、 お話もございますから」

 朝からの呼び出しに戸惑いながら、 身支度をしたカムライは、 ユキアの部屋に赴いた。
 食卓には すでにカムライの分も用意されていた。
 いつもの朝食よりも豪華だ。

 イヒカが聞いたら がっかりするだろうが、
 実は、 コクウ王家の食事は、 安全が考慮されているだけで、 庶民と大して変わらない。
 目端の利いた庶民のほうが、 むしろ 良い物を食べているかもしれないくらいだ。

「今朝は殿下とご一緒しようと思って、 いつもより豪華に用意させました」
 ユキアが言ったことから、 マホロバでも 似たようなものなのだろうと察せられた。

 食事が始まった。
 いつもより さらに美味しく感じるのは、 隣にユキアがいるからだろうか。 太ってしまいそうだ。
 カムライの心境は 複雑である。
 ユキアも意外に健啖家だ。 食卓上の物が 勢いよく消えていく。

「わはっ、 けっこう豪快に食べるんですね」
「殿下は 本当に美味しそうに召し上がるから、 見ていて気分爽快です」
「そうかい、 なんちって」
「あっ、 この付け合せの白いのが美味しいです」
「どれ?  あっ、 美味い 美味い」

 あほくさいくらい楽しそうな朝食が終わって、 カムライが聞いた。
「さて、 お話というのは なんでしょうか」
「内密な話です。 メドリ以外の者は 下がりなさい」

 三人になると、 カムライは ドキドキしながら、 あれこれと考えてしまった。
 メドリから ユンの事を聞いて、 文句を言われるのだろうか。
 正直に言ってしまって良いものか、 しかし 嘘をつくのは下手だし、
 ばれたら 却って怒らせちゃうかもしれないし、 どうしよう。

「いくつか 気になっている事がありますので、 お話しておいたほうが 良いかと思います」
 冷静なユキアの口調に、 思わず緊張してしまう カムライだった。


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コメント
199: by ポール・ブリッツ on 2012/06/23 at 18:42:42 (コメント編集)

カムライくん、結婚前から尻に敷かれている……かわいいやつだ(^^)

200:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/06/23 at 19:11:27 (コメント編集)

二股の引け目がありますから、
強気に出られないのでしょう。

ユキアにも書く仕事がありますが、女は、ホラ、開き直りますから。

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