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赤瑪瑙奇譚 第六章――8



「恐ろしい目にあいましたね。 もう大丈夫です。 帰りましょう」
 ツクヨリは ユキアの手を引いて、 地下室を後にした。

 続いて 衛士が出て行こうとすると 、見張りの男が 倒れたまま呻いた。
 衛士が素早く戻って、 止めを刺した。

 メドリは 酒樽の陰から姿を現し、 倒れた男たちを 調べてみたが、
 身元をうかがわせるものは 何も無かった。



 地上に出ると 、離れたところに 二頭の馬が 繋いであった。
 ツクヨリは 馬上からユ キアを抱え上げ、 横乗りにさせると、 片腕を腰に回して 片手で手綱を取った。
「姫が怖くないように、 ゆっくり行きますからね。 安心してください。
 怖い思いをさせて申し訳なかった。 迎賓館の警備を 強化させましょう」

 警備が甘いわけではない。 ユンの姿で 出入りするのは 大変なのだ。
 メドリをどうやって館内に引き入れるか、 ユキアは 頭が痛いくらいだ。
 不埒者が 普通に襲ってくる分には 充分の対応だった。
 ただ、 マホロバからの使いだと 堂々と名乗られたのが 盲点だった。
 国賓の荷物を改めることを躊躇したのだろう。 手落ちというには 気の毒なところがある。

「兄上は 何処に行ったのだろう」

 馬を並べていた供の女衛士が、 ツクヨリの言葉に さりげなく答えた。
「覆面女のところじゃないですか。 ユンとかいう……」
「姫の前で それ以上言うな!  ………………わたしが……兄上なら ……良かったのに……、
 わたしが 姫をお守りします」

 切なそうに言われたが、 ユキアは 居心地が悪かったので、 黙っていた。
『来なかったわよ』 と言う訳にもいくまい。

(あれっ?  どうして この女衛士は、 そしてツクヨリは 『ユン』を知っているのだろう。
 知っているのは カムライ、 メドリ、 ホジロの他は、 マホロバからの調査団と宿の人間……
 カムライと一緒のところを見られたのは、宿だ。 あの場に 誰かいたのだろうか)

 町中に入ると、 通りすがりの人々の視線が 馬上の二人に注がれる。
 二人を見ては、 ひそひそと 互いに耳打ちしている様子が 馬上から 丸見えだ。
 どうにも 目立ってしまっているようだ。
 どんな風に見えているのか 気になる。



 一人残されたメドリも 地上に出て、 戻ることにした。
 第三王子が一緒なら、 ユキアは 無事に帰れるだろう。

 しかし、 自分は この姿で 警備の厳重な迎賓館に どうやって入ればいいのだろう。
 頼りになりそうには思えないが、 ホジロにでも 相談しようか。
 着替えくらいは 何とかしてもらえる かもしれない。

 思いついて、 その場を離れようとした時、 やって来る人影を見て、
 とっさに 焼け焦げた壁の陰に 身を潜め、 やり過ごそうとした。

 足音と気配から 十人ほどと思われた。
 運の悪いことに、 その一行は メドリの隠れる壁のそばで止まった。


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