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赤瑪瑙奇譚 第六章――7



「いいえ、 姫様お一人を置いては 行けません」

 言う事を聞こうとしないメドリを相手に、 身振り手振りだけの押し問答をしていると、
 ふいに、 ガタンと音がした。

 メドリが、 仕切りの中に一つだけ残っていた 酒樽の影に隠れた。
 ユキアは、 顔を隠すように 後ろ向きになる。

 見張りの交代に来たのだろうか。
 どかどかと 無遠慮な音を響かせて、 降りてきた足音は 二人。
 居眠りをしていた男が あわてて飛び起きた気配がした。
「おい、 どうしたんだ。 何かあったのか」

「さあ、 俺たちも知らない。 ここに来いと指示があったんだ」
 男たちは そのまま居ついてしまい、 何をするでもなく、 手持ち無沙汰に ごろごろしはじめた。
 時折、 ちらりちらりと、 格子の中と 地下室の出入口に 視線を往復させる。
 男たちも そわそわしていたが、
 この三人の他に首謀者がいて、 そいつが この場に顔を出すかもしれないと思うと、
 ユキアに緊張が走る。

 壁に 鍵がないことに気がついたら どうするだろうかと、 あれこれ考えたが、
 こうなっては 黙って待つより 仕方がない。
 メドリも 出て行くわけには行かなくなった。
 隠れているメドリは、 ユキアに渡された剣に 手をかけていた。

 どのくらい そうしていただろうか。
 突然、 入り口が開く音がした。

 男が一人 様子を見に行ったところを 切り殺された。
 悲鳴が響く。
 来たのは二人。
 残りの男たちに剣を振るい、 たちまちのうちに 斬り伏せた。

 乱入してきたのは、 第三王子ツクヨリと、 供の女衛士。
 男たちが油断していたとはいえ、 二人とも 悪くない腕だ。 あっという間の 出来事だった。
 犯人たちは、 一言も口を開く間を与えられず、 無様に横たわった。

「ユキア様、 ご無事ですか」
 ツクヨリが、 格子に駆け寄った。

 袖で顔を隠すように覗いていたユキアは、 衛士が 入り口に向かうのを見て、
 持っていた鍵を、 倒れた男の手元に 放り投げた。

「ツクヨリ様!」
 鍵が落ちる音を消そうとして、 大きな声で叫ぶ。
 ツクヨリが、 錠前を睨みつけ、 少し苛ついたように 振り向いて言った。
「鍵は 見つからぬのか!」

 衛士は、 あちらこちらと捜した挙句、 男たちの懐を探って 小さく舌打ちをし、
 やっと 落ちている鍵を みつけて差し出した。

 格子扉を開いたツクヨリは、 ユキアの肩を抱き、 微笑んで言った。
「恐ろしい目にあいましたね。 もう大丈夫です。 帰りましょう」


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コメント
189:ようやく by 十二月一日 晩冬 on 2012/06/20 at 18:09:29

追い付きました^^
やはり文章力凄いですよね・・・見習う処ばかりです
それに更新の頻度も―
予めストックがあるのでしょうか?

190:Re: 十二月一日 晩冬様 by しのぶもじずり on 2012/06/20 at 18:55:21 (コメント編集)

ストックはあります。
いきなりブログに書く、という器用な事が出来ない人なのです。
その上、一度書いたものを、ちょいちょい直す。
二章分を ざっくり削除したりもしました。
前後を 大幅に入れ替えたりもしました。
忘れかけた頃に、読者のつもりになって読みなおすと、分かりにくいところがあ~!!!
そして、掲載時に、細かいところを直しながら更新。

不器用ですから(高倉健のつもり……古い)
サクサク書ける方が うらやまし~~い! です。

430: by blackout on 2012/08/15 at 01:07:15

自分は逆にいきなりブログに書いてますw
でも、サクサクってのはムリですw

431:Re: blackout様 by しのぶもじずり on 2012/08/15 at 10:11:18 (コメント編集)

私の場合、物語は縦書きで書いていますので、いきなりブログは無理なのです。
書く時の呼吸というか、息遣いのようなものが、縦書きと横書きでは違う感じがするので、
ブログで横書きに変えた時、さらに少し直しています。

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