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馬十の辻に風が吹く 第八章―8

 しなくてはならない後始末が、 また増えた。
 幸真千の居どころを 真咲は容易に吐かないだろう。
 強い瞳を見れば、 想像がつく。
 殺すしかないと思えば、 残念だ。
 気に入っていたのに。

 広い庭の雑草のここかしこに、波が走り、 何とも知れぬ音が聞こえる。
 太保以は、 そぞろに眺めて、胸を押さえた。
 痛みは、いっこうに引く気配が無い。
 そうこうしているうちに、 空は深い菫色に変わり、 夜の帳を下ろした。

 雑草の森が 静かに動きを止めた。
 そよとも動かない。
 ひたすらに 静かな闇があるだけだった。

「どうした……」
 苛立ちを言葉に乗せ、 闇と一体になった庭を睨んだ。
 何処からともなく、 夜啼き鳥の声が、 複雑な調子で歌声を響かせた。
 鳴き声が終わるのを待っていたかのように、
 朽ちかけた庭灯篭に 小さな明かりが灯った。

 無言の明かりが 太保以の窮地を照らす。
「まさか、 あなたが生き残るとは」
 太保以から奪った剣を、 灯篭と並べるように地に突き立て、
 ゆらりと真咲が立った。

「私を殺すか。 それも手遅れだ。 うふふふふ、 すでに事は成った」
 押さえていた胸から手を離し、 太保以は体を起こした。
「いいえ、 よもや帝を護る者が、 私一人とお思いですか。
 御無事です」
「報せる暇はなかったはずだ。 間に合ったはずがない。
 何故 無事と分かる」

 だが、 太保以の顔に 一瞬不安がよぎった。
「分かります。 分かるのです。
 あなたが…… 生きているから」



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