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馬十の辻に風が吹く 第八章―7

 真咲の揺るがぬ視線が 太保以を縫い留める。
「あなたの謀(はかりごと)は、 成就しません。
 大蔵卿も、 望んでいらっしゃらない御様子。
 公になっていない今なら、 止められます」
 息子の企みに気付いて、 毒草をすっかり処分したことから、 大蔵卿の心中は測れる。

「それはどうかな」
 あながち強がりとも思えない様子で、 太保以は うっすらと嗤(わら)った。
 その途端、 片手が胸をかきむしる。
 絞り出す声で放った 太保以の言葉に、 真咲は背筋を凍らせた。
「噂とは無責任なものだ。
 些細な嘘を あっさりと取りこんで、 『本当』に紛れ込ませてしまう。
 美穂積皇子から祝い酒が届いても、 不審に思われることは無いだろう。
 固めの杯がとりかわされれば、 不遇をかこつ皇子の謀反が出来上がる」

 真央土国の婚礼は 立会人の挨拶で始まる。
 次に、 新郎新婦が互いに名のり合い、 誓いの詞を述べる。
 互いの後見人が見届けた後、 祝い酒で固めの盃を交わすのだ。
 どの祝い事でも、 だいたい手順は同じだ。 挨拶と列席者が変わるくらいである。
 後見人が複数になる場合もあるが、 今回は 五人が一斉に盃を干すことになる。

 上皇、 帝、 東宮、 葦若の宰相、 砂々姫。

 美穂積が帝位を狙っての謀反だと思われれば、
 後ろ盾の無い身である上に、 やり口があからさまと判断されるだろう。
 無事に済むはずが無い。
 幸真千が見つからなければ、 次の帝は……。

「もう遅いのだ。 止められない」
 太保以の声に呼応するように、 真咲が宙に跳んだ。

 その空隙を、 突如として白刃が薙ぐ。
 現れ出たいくつかの影に 次々と襲いかかられ、
 真咲は 身を交わした勢いで、 庭に降り立ち、
 背丈ほどもある雑草の群れに走り込んだ。
 襲撃者たちも、 すかさず後を追って 草叢に突入した。

「もう、 遅いのだ」
 太保以は、 もう一度呟いた。



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