RSS

犬派のねこまんま 9である          byねこじゃらし

<町の道路で地質学>

 今でこそ、 日本の道路のほとんどが コンクリートかアスファルトで 覆われているが、
 少し前まで 地方都市の住宅地では、 裏道は 砂利が敷いてあったものだ。

 吾輩が住んでいた とある地方都市も、 表通りは 立派なアスファルトだったが、
 アパート前の道路は、 砂利道だった。
 とはいえ、 しっかりとした市だったから、 砂利が まだらになったり、 でこぼこし始める頃には、
 市のトラックが来て 新しい砂利を撒き、 整備されていたのである。

 一緒に遊ぶ相手が見つからない時、 吾輩は 砂利を検索して遊んだものだった。

 初めは、 石蹴り用の石 を探すのが目的だったが、 その内に、 当初の目的は 二の次になった。
 化石が見つかるのである。

 何処から運ばれてきた砂利だったのか、 貝の化石が多かった。
 巻貝の渦巻きが見える化石 を見つけた時などは、 うれしかった ものである。

 道路整備のトラックが現れて、 新たな石を 撒いて行くのが 待ち遠しかった。

 そうしたある日のこと、 吾輩は あの石を 発見することになったのであった。

 大きさは、 赤ん坊の握りこぶしほどだったろうか。 砂利にしては 少々大きい。
 表面は なめらかな すりガラスのように 半透明に見えるが、
 ほんの少し 欠けたところからは、 透明な石 であることが分かる。

 気に入って 持ち帰った。 机の上に置き、 暇な時は 手にとって撫でた。


 我が家に セールスマンがやってきて、 母に 子供向けの学習雑誌を勧めた と思いたまへ。
 母は、 まんまと購読を申し込まされた。
 毎月 一冊届けられる事になったが、 最初の一冊は その場で 置いて行った。

「動物大観」

 誌名もたいそう だったが、 グラビアサイズの 贅沢な本だった。

 表紙がすごい。
 ぐったりした子象にのしかかり、牙をむくの背後から、インドゾウが片足を持ちあげて、
 を踏みつぶそうとしている絵である。
 迫力満点だ。
 解説によると、 子どもを殺された母象が、 怒って を踏み殺そうとしている場面であるらしい。
 どうやら 子象は死んでしまっているようだ。 死闘 である。

 あまりに印象深かったため、 後に 同じような絵を 自分で描いてしまったほどだ。

 記事も面白かった。
 動物の進化の過程 が図解になってたりしたが、 吾輩が一番 興味 を引かれたのは、
 カバを生け捕りにする方法 と、 ワニを生け捕りにする方法 の解説だ。

 日本に住む子どもが 実行出来るとは思えなかったが、
 わくわくした
 イメージトレーニング もした。
 ワニ の方が 難しそうだと思った。
 動物園に居る カバ しか知らなかったせいだ。

 残念だが、 未だに カバもワニも、 生け捕りにしていない。

 吾輩が 十分「動物大観」を堪能していたにもかかわらず、
 ある日 パラパラとめくった父が、
「ねこじゃらしには まだ難しすぎる。 他の本に変更しろ」 と母に命じたのであった。

「動物大観」はその一冊きりで、 知らぬ内に「科学大観」 に変更された。
 動物と科学というだけで、 難しさに変わりは無いように思えたが、
 その時期の吾輩は ききわけの良い子だったらしい。 すぐになじんだ

 思えば、 昔から吾輩は、 こういう侮られ方をよくしていた。

 母にくっ付いて行った本屋で、
 翻訳物のミステリーが載っている マガジン誌を見つけ、 買おうとしたところ、
「お嬢ちゃん、 こんなに難しい本を読むの?  えらいわねえ。 大丈夫?」
 なあんて事を、 本屋のおばちゃんに 言われた。

 見るからに おバカな子 に見えるのだろう。 よくあることだった。

 さて、 「科学大観」に、
 アフリカで発見された「世界一大きなダイヤモンドの原石」についての記事があった。
 カットされて、イギリスの王様のものになったらしい。
 そこに、ダイヤモンド原石の写真 があったのだ。

 うふふふ、 吾輩が砂利道で拾った石と 酷似 していたのである。

 吾輩は、 拾った石を ダイヤモンドの原石 だと決めつけた。
 誰も信じないであろう ことを想像できないほど おバカではなかったから、
 秘密にした。

 ひとりで こっそり眺めて 楽しんでいたのだが、 ある日、 気がつくと、 母に捨てられていた。

 ガーン

 大人の常識で考えれば、 良くても  せいぜい水晶であろうが、
 捨てられていなければ、 未だに こっそりと白い石を眺めて、 一人悦に入っていた はずである。

 もちろん、 誰にも内緒で。


8へ☆☆☆10へ

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
トラックバック
by まとめwoネタ速neo on 2012/06/20 at 16:26:30

<町の道路で地質学> 今でこそ、 日本の道路のほとんどが コンクリートかアスファルトで 覆われているが、 少し前まで 地方都市の住宅地では、 裏道は 砂利が敷いてあったものだ。...

トラックバック送信先 :
コメント
179: by ポール・ブリッツ on 2012/06/18 at 19:38:28

その気持ち痛いくらいにわかるであります。(T_T)

180:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/06/18 at 23:46:46 (コメント編集)

カバとワニ 生け捕りにしたいよね。

181: by コピーライト03 on 2012/06/19 at 06:27:23

僕もありましたね、あの、凄くどうでもいいんですけど、お散歩してるときに、「手ごろな枝」、を持ってたんですよね、で、気づかないうちに、なくしちゃって、おろおろしてたら近くのカップルが、その枝を拾って遊んでたんですよね、で、案の定ぼくは泣きました、つまり、返してほしいんだけど、頼むと強奪行為とみなされ喧嘩が発生してしまう可能性があるのでいえない、ですね、当時はそこまで深く考えずに泣きましたけど、ははは

まあ、あの、ダイヤモンドにの石も、そこらにある石も似たようなもんですよ、ははは、結局は、奪い合うから価値があるだけですからね

僕もあの、抜けてる子とよく回りに、なんていうかみられてましたし、今も見られてます、ははは、まあ、ちょっとなんていうか、なぞですよね、あのテレビの見すぎかもしれないんですけど、見た目で判断するというのが凄く大きすぎますよね、僕からしてみると見た目なんてどうでもいいんですけど、周りは本当に「見た目命!!」、なんですよね、よくわかんないですね、ははは、僕がいうといやみになりますしね、ははは

182:Re: コピーライト03様 by しのぶもじずり on 2012/06/19 at 11:49:19 (コメント編集)

捨てられる現場に居合わせていたら、お願いして、返してもらったんですけどね。
知らないうちに捨てられてしまったから、対処の方法がありませんでした。

見た目が、案外深い真実を掘りあてていたりしますからね。
油断できないです「見た目」。

そうは言いつつ油断しっぱなしで、ここまで来てしまいました。

183: by lime on 2012/06/19 at 16:00:25 (コメント編集)

ねこじゃらしさんの子供時代は、なんとも魅力的です。そして私にもこんな時代があったと共感できる部分がいっぱい。

拾った半透明の石が、どこに繋がるかと思って待っていたら、ちゃんと「科学大観」の中に花開いて、オチにいたり、小気味よい展開でした。
構成が抜群です。

動物図鑑も綺麗な石も、子供心をくすぐりますよね。
数年前、田舎の土産物屋で買った「何となく綺麗な石たち」が引き出しから出てきたので、要らないな、と思って庭に蒔いてたら、幼稚園の娘が「庭で宝石拾った!」と、うるうる感激してそれを握っていたので、心が痛かった覚えがあります。
すまん。

184: by いさばや on 2012/06/19 at 18:30:49 (コメント編集)

初めてコメントさせていただきます。

自分は田舎に住んでいるのですが、
砂利などを敷いている道には何か宝物があるって子供のころ聞いた事があるので、良く綺麗な石を拾っては大切にしていました。
もちろんその中にはカニの化石だとか、サンゴの化石だとかありますし、共感しました。

それらは恐らく今後、手放す事は無いと思いますが、
れっきとした大切な宝だと思いますので、
いつまでも大切にしていきたいものですよね。

185:Re: いさばや様 by しのぶもじずり on 2012/06/19 at 18:54:17 (コメント編集)

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

お仲間発見。カニにサンゴですか。いいですねえ。
「砂利道には宝物がある」
確かにそうですね。

186:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2012/06/19 at 18:59:50 (コメント編集)

>「なんとなく綺麗な石たち」
いいですね。好きです。

>「宝石を拾った」お嬢さん、うれしかったんでしょうね。
うちの母も、分かりやすいところに捨ててくれたらよかったのに。
そうだったら、発見の喜びを二度味わえたのに、と思います。

540: by 太巻きおばば on 2012/09/08 at 03:22:39

ふふふ、何だかドイツ人みたいです。
ドイツ人って、どこか旅行に行くと
その土地の石を拾って大切にしてます。
私に捨てられてしまったのは言うまでも有りません(笑)

543:Re: 太巻きおばば様 by しのぶもじずり on 2012/09/08 at 12:24:10 (コメント編集)

いらっしゃいませ

人種の問題なのでしょうか。日本にも石好きはけっこういると思いますよ。
最近はパワーストーンが流行ってたりしますしね。
ただし、純粋な(?)石好きは、昔から おじいちゃんが多いようですけど。

> 私に捨てられてしまったのは言うまでも有りません(笑)
捨ててしまうのは、たいてい女の人みたいです。
そういう事になってます。

881:こんばんは。。 by on 2012/11/30 at 20:48:00 (コメント編集)

>ある日、 気がつくと、 母に捨てられていた。

もしかしたら、磨いてカットしていたら・・
億万長者になっていたかも????!!

まるで、わらしべ長者のようで、
わたしもこれからは下を向いて歩くことにします。

訪問ありがとうございました。
★ポチ☆彡☆彡

882:Re: 雫様 いらっしゃいませ by しのぶもじずり on 2012/12/01 at 00:10:14 (コメント編集)

> もしかしたら、磨いてカットしていたら・・
> 億万長者になっていたかも????!!
そーなんですよ~。鑑定しないうちは、思い込みの中では立派なダイヤモンド!

日本ではダイヤは採れないという説が有力みたいですけど、まだまだ分かりませんよ。
世界は謎に満ちてますから。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア