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馬十の辻に風が吹く 第八章―2


 桜子と幸真千の消息が不明なまま、 熱密との交渉は順調に進み、
 交渉は成った。

 そうして、 突然 降って湧いたような噂が 巷に流れた。
 葦若と砂々姫の婚礼話だった。
 石動原邸で 祝言が執り行われるという。

 幼い二人の御子が行方知れずになって、 沈みがちだった都を、
 噂は あっという間に席巻した。
 婚礼の仲立ち人を 帝が自ら買って出たとか、
 葦若の後見人の北山院も ノリノリだとか、
 事情があって 自国を離れられない熱密王に代わって、
 東宮が 砂々姫の後見人を務めるらしいとか、
 美穂積皇子が 祝いの酒を贈る予定だとか、
 何処から漏れてくるのか、 ダダ漏れの詳細が 都人の口に登った。

 それが本当なら、 上皇、帝、東宮が 石動原邸に勢ぞろいする事になる。
 前代未聞だと、 なかなかに かまびすしい。
 警備が大変な事になるのではないか と心配を口にする人間も居れば、
 事情通らしき者が 訳知り顔に声を潜めたりもする。
「祝い事だ。 警備の兵も華やかないで立ちになるものの、 通常通りらしいと聞く」
 あちらこちらで、 話に花が咲いた。


 それはともかく、 内裏では、
 大后に呼び出されて、愚痴やら鬱憤やら 体に悪そうな物を吐かれ、
 やっと部屋に戻った尚侍は 一通の文を見つけた。

「?  私宛てではないようですね。
 真咲というと、 桜子様の教育係……、
 内裏を下がっていて 仕方なく ここに置いて行ったのでしょうか」
「私が、 手配して届けましょう」
 少しばかり困り顔の尚侍に、
 いつの間にか現れた女蔵人が 手を差し出した。

「お願いね。
 あと、 真央土の祝い事には不慣れな砂々姫の介添え役に、
 女官を付けて欲しいといわれているの。 お願いしますね」
「私でよろしければ」
 卯白の女蔵人は 便利な女官なのであった。

 祝い事は おおむね日暮れから始まる。
 その日、 日が傾いた都大路を、
 煌びやかにしつらえられた輿を中心にして、 行列がしずしずと進んだ。
 簾に隠れて見えないが、 輿の中には 正装に身を包んだ砂々姫が居た。
 向かう先は 石動原邸である。

 その頃、 待ち受ける石動原邸に訪れるものがあった。
 仰々しく小さな輿に乗せられた 祝い樽である。
 先導してきた男が門内に進み出て、 美穂積皇子からの祝いだと告げ、
 慣れない様子で 口上を述べて、 祝い樽を差し出した。
 出迎えた家令は、 華やかな飾り付けに目を細めて 受け取った。



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