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馬十の辻に風が吹く 第七章―5

 太保以は続ける。
「交渉に長けた人材ならば、 探せば他にも居るはずです。
 領地を取り上げ、 家を潰しても良いくらいだ」

「そなたの言い分は分かった。 二人を大切に思ってくれて嬉しい。
 しかし、 まだ調査中だ。 生きているとも死んでいるとも、 証拠が出た訳でもない。
 桜子と幸真千の無事を ともに祈ろう」

 内裏にまで出向いた甲斐もなく、
 帝の手ごたえの無さに、 太保以は苛立ちを含んだ息を吐いた。
「はあー、 叶うというなら いくらでも祈りましょうが、
 未だ桜子皇女も、 幸真千皇子も、 教育係の真咲殿も 消息が不明とあっては……、
 祈りが叶うと信じられれば良いのですが」
「教育係は無事だよ」
 帝の返答は普通すぎて、
 〈今日は晴れだよ〉 とでも言っているようにしか聞こえない。
「見つかったのですか」
 と驚いて、 身を乗り出した太保以に返って来た答えは
 〈昨日は曇りだった〉 に近い言い方の、
「馬車には乗っていなかった」
 だった。

 説明を求められて、
「置いてきぼりにされたらしい」
 と 帝は簡単に答えた。
「では……、 では真咲殿は、 今も内裏に居るのですか」
 太保以の様子が変わった。

「さあ、 どうだろう」
 帝の様子に変化は無い。
 愛想の無い返事を返すばかりだ。

 太保以は 眉を険しくした。
「くっ、陛下。 無事かどうかはともかく、
 事の責任をはっきりさせて処罰しなくては 帝の権威にも関わりましょう。
 石動原家を潰さないのであれば、 せめて 葦若の宰相だけでも罰して下さい。
 示しが付きません」
「もちろん、 事の次第が明らかになったあかつきには、 責任を問わねばなるまい」
 帝の返事は、 それ以上に太保以の言葉を許さない きっぱりとしたものだった。


 白桐殿を辞した太保以は、 通りかかった女官を呼び止め、
 真咲の所在を尋ねたが、
「内裏を下がっておいでです」とだけ。
 重ねて問いかけても、 甲斐の無い答えしか得ることは出来なかった。
 頼りにならない女官だ。
 真咲に会う手立てを考えなくては と行き過ぎて、
 はて、 今の女官は何者だったろう と首を傾げた。
 会った事があるようでもあり、 初めて見たようでもあり、
 若かったのか年配だったのかも印象が無い。
 振り向いたときには、 すでに姿が無かった。

 再び歩き出した太保以の胸を 鈍い痛みが襲った。
 近頃なじみになりつつある痛みだ。
 始末の悪い病で無ければ良いが。
 思いながら 足を速めた。

          第八章につづく


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