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馬十の辻に風が吹く 第七章―3

「話を全然聞いていないのね。 抗議しているのだけれど。
 謂れのない侮辱と 見当違いの非難には 断固抗議致します」
「抗議などより おねだりの方が似合いますぞ。
 近頃流行りの高価な紅でも、 煌びやかな髪飾りでも思いのままだ。
 悪い事は云わん。 可愛らしくしていることだ」

 多万記の追撃に、 砂々姫は 美しい柳眉を逆立てた。
「悪い事は云わんですって? 
 さっきから 悪い事しか言っていないように聞こえますけど。
 大きな声だから、 全部聞こえましたわよ。
 葦若くんの首を刎ねるとか、 火あぶりにするとか、 馬鹿じゃないのかしら。
 馬にも馬車にも詳しい人が、
 むざむざ あんな事故を起こすはずがないじゃないの。
 どこかの間抜けが勝手にやったか、
 そうじゃ無ければ 指示を無視したに決まっているわ。
 いらないのだったら 熱密に貰って帰ります」

「姫様―っ、 貰って帰るって……、 そ、そ、そんな簡単に……」
 爆弾発言に 面構え家臣は撃沈した。
 いくらお気楽な坊ちゃんに見えても、 葦若は 大国真央土の参議の地位に在り、
 名門石動原家当主なのだ。
 国際的な問題発言である。

「そうはいきませんぞ。
 あれでも 石動原家の当主だった男ですから、
 若衆茶屋で男を買うような訳にはいきませんな」
 それみた事か と肩を落とした面構え家臣をよそに、
 砂々姫は 目を丸くして無邪気に質問をした。

「若衆茶屋って なあに? 
 真央土では 男が買えるの?  面白い事を聞いたわ」
「ひー、姫様――っ、 忘れてください。
 聞かなかった事にしましょう。
 変なモノを買っちゃいけません」
 面構え家臣の悲鳴と懇願が、
 部屋の空気を 奇妙な雰囲気に歪(ゆが)めて かきまわす。

 話がとんでも無い方向に行きそうになって、 さすがに周囲も慌てた。
「陛下の御前(おんまえ)でございますぞ」
「お静まりください」
「謁見はこれまで」
 てんやわんやで取り繕う。

 追い出されるようにして 多万記と砂々姫が退出すると、
 帝が ぽつりと呟いた。
「……何故だ」


 熱密との交渉は停滞した。
 価格交渉や双方の条件等については、 葦若の詳しい覚書が提出されており、
 後は 契約を結ぶだけだと考えていたのは甘かった。
 砂々姫は 一筋縄で行ける相手ではなかった。

 兵部頭は、 足元を見られて値をつり上げられそうになるし、
 代わりに交渉に出た参議が 新たな条件を持ち出されて 危うく飲まされそうになったり、
 中納言や大納言までもが丸めこまれそうになったりして 歯が立ちそうにない。
 ここで 大臣まで出て行ってどうにもならなかったら、 後が無い。

 ついに帝は、 葦若に謹慎を解いて 出仕するよう促した。



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コメント
2175: by LandM on 2014/05/19 at 22:18:10

ま、確かに悪いことは言わん。
・・・と言ってるときは悪いことを言っているわけであって。
まあ、単純に損得勘定の取引とかそういう風にした方が分かりやすい話なのですが。
話を濁すのがヒトの性ですね。

2178:Re: LandM様 by しのぶもじずり on 2014/05/20 at 17:51:32 (コメント編集)

わっはっはっは  確かに!

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