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赤瑪瑙奇譚 第六章――6



 夜が明け始めた焼け跡を、 朝靄(あさもや)が 覆っていた。

 昨夜検討した場所を、 ユキアが 音もなく動いては 調べていく。

 一つの瓦礫の下に 地下に下りる入り口を 見つけた。
 瓦礫に 半ば塞がれているので、 可能性は低い と思ったが 下りてみる。
 真っ暗なので、 入り口の蓋は 開けておくしかない。
 ひんやりとした地下室には、 古びた菰と荒縄が打ち捨てられているだけで 何もなかった。
 氷室だったのだろうか。 諦めて 次を探した。

 そこから遠くないところに、 焼け煤けた床の切れ目を見つけた。
 今度は 動かした形跡がある。 ゆっくりと開けた。
 ほんのわずかに 明るさがあった。 中で 明かりを灯している証拠だ。
 素早く 身を滑り込ませて 入り口を閉じた。

 酒樽が いくつか積んである。 焼けた建物は、 酒屋か酒場ででもあったのだろう。
 奥を覗くと、 酒樽にもたれて 居眠りをしている男がいた。
 案の定、 そこに ぽつんと明かりが点っていた。

 さらに奥の隅に、 板壁と格子で仕切られた一角があり、 格子の扉に 頑丈そうな錠前がついていた。
 貴重な酒の保管場所だったのかもしれない。
 見回すと、 地下室の入り口付近の壁に、 鍵がぶら下げてある。 それを手に 静かに進んだ。

 居眠りしている男は、 一度 ピクリと身動きしたが、
 それきり かすかな鼾をかいて 熟睡体勢に入ったらしい。
 ゆっくりとした呼吸音が、 鼾を伴って 規則正しく繰り返されている。

 ユキアが 日頃の修業の成果を 試す時だ。
 呼吸を整え、 気配を殺して、 男の近くを通り抜けた。
 男が目を覚ましても、 しばらくは 気付かないであろうほどの 目立たなさだ。

 大正解だった。
 仕切りの中に 姫の姿をしているメドリがいる。

 鍵を開け、 中に滑り込むと、 格子の隙間から 錠前を戻した。
 こうすれば、 鍵はユキアが持っているから、 気づかれても、 かえってしばらくは安全だ。

 大胆にも すっかり寝入っているメドリを、 揺すって起こす。
「あら、 姫様」
「しーっ、 着替えて」
 メドリは まだ 半分寝ぼけているのか、 素直に従う。

 二人は、 音を立てずに 着替えて 入れ替わった。
「メドリは ここを出て、 役人に知らせて頂戴」

 その頃になって、 はっきりと目を覚ましたメドリは、 頑として動こうとしない。
「いいえ、 姫様お一人を 置いては行けません」


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