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馬十の辻に風が吹く 第六章―3


 困ってしまったのは帝である。
 血相を変えてねじ込んできた木五倍子の対応に苦慮しているところに、
 紅椿までが来て 似たような事を言い出したから、 目を白黒することになった。

「まあ落ち着いて。
 当たるも八卦(はっけ)、 当たらぬも八卦 と言うではないか」
 何とかしてなだめようとする。
 が、……。
「当たりまくりだったのですわよ。
 のんきな事を言っている場合ではありません。
 お許しが無ければ、 わらわ一人でも桜子を連れて 方違えに行きますわ。
 可愛い娘の危機だというのに、 陛下ってば 全然頼りになりませんのね」
「外れれば良し、 でも万が一当たった時には 取り返しがつきません。
 阿房の条件に合う場所を調べました。
 斗平野がぴったりです。
 石動原家に使いを出して 命じてください」

「あら、 さすがに紅椿ちゃん、 さっそく調べたのね。
 斗平野なら都の南西。 山を越えた先になるわ。
 桜子の方違えにも丁度いいわ。
 仲良しだから 一緒に行かせればいいじゃないの。 ねっ」
「避けられる災難に 何も手を打たないのは、 馬鹿のする事です」
 言いたい放題である。
 このところぎくしゃくしていた二人が 共同戦線を張ってしまった。

 周囲の都合など無視して突き進む木五倍子と、
 冷静に突っ込んでくる紅椿が共闘すれば 怖いものなど無い。
 帝だって止められない。

「ささ、 早くお命じください」
「い、石動原は 当主の宰相が交渉の大詰めで忙しいのですよ」
「そんなことは、 どうでもいいわ」
「わ、分かった。 ではなるべく早く宰相に相談しよう。
 近衛の中から斗平野に詳しい者を選んで 護衛も付けようほどに、
 しばらく待って……」
 慎重を期そうとする帝の言い分を、 時間稼ぎの言い訳と受け取ったのか、
 二人の妃は 一歩も譲らない。

「一刻を争いますのよ」
「宰相の叔父が都に来ているというではありませんか。 その者にお命じになって。
 宰相だとて、 幸真千の安全の為なら 否とは言いません」
「そうだわ。
 大事な我が子に危険が迫っているというのに、 悠長な事を言っていられません。
 わらわから直接 石動原家に使いを出します。
 護衛には石動原の兵を使えばいい」

 周囲は ため息をつくだけである。
 この二人を仲良くさせてはいけなかった。
 ぎくしゃくした関係に戻って欲しい、 と帝は心から願った。



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