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馬十の辻に風が吹く 第六章―2


「お身の周りのお小さいものが、 次々と災難に見舞われていらっしゃいますな」
「誰から聞いたの」
 さらりと答えたのは 紅椿だ。

「恐れながら、 占術に表れています」
「でも それくらいの事なら、 わざわざ占わなくても 誰でも知っていてよ」

「本日初めて内裏に伺いました。
 まだ、 紅椿様のご様子を調べられるほどには 滞在しておりません」
「あらそう。 まっ、 それはいいわ。 もう過ぎてしまった事ですもの。
 あの忌々しい尾黒がのさばっているうちは、 小さいものは諦める事にしたの。
 今度飼うなら、 熊とか虎にするわ。
 そんなことより、 これから先に起こる事を占いなさい。
 何処まで当たるか確かめてあげる」
 さすがに 帝の寵妃(ちょうき)、
 激しく上から目線の言い方に 阿房は一瞬目を見開いたものの、
 立ち直りは意外に早かった。

「まだ終わってはいません。
 お小さいもの…… いえ、 お小さい方ですかな。
 危険が迫っております」

「人間だと言いたいのね。 でも幸真千は元気よ」
「それは良うございました。
 すでに何度か 九死に一生を得る事態になっていた と卦(け)には出ておりますので。
 水難、火難、もうひとつ、獣の難。 外れましたかな」
 阿房は不遜な笑みを浮かべて 紅椿を見た。

 犬や鳥の事なら うっかりしゃべってしまうかもしれないが、
 皇子の身に起こった災難を 軽々しく漏らすような女官たちではない。
 紅椿は、 初めて 真剣なまなざしを阿房に向けた。

「終わっていない…… とは?」
「今年の秋が終わり、冬が始まる頃まで 油断は出来かねます。
 あなどれば 最悪の事態も起こりえます。
 高い場所から落ちる相も表れております」

 怯えきった北州犬や バラバラにほぐされてしまった鶯が、
 紅椿の頭の中をよぎった。
「うーん、 こればかりは、
 占いが当たるかどうかを黙って待っている訳にもいかないわね。
 幸真千の命と引き替えにはできないわ。
 防ぐ方法も占えるのかしら」

 阿房は 占いの道具を手元に引き寄せ、
 何やら動かしたり並べ替えたりしたあげく、 おもむろに切り出した。
「方位は内裏から西南、 草原に近く……」
 いくつかの条件を上げ、
 そこに隠れていれば 無事にやり過ごせるだろう と自信ありげに言いきった。



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