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馬十の辻に風が吹く 第五章―5


「殿下。 いきなり縁の下ですか」
「あたりまえだ。
 ふつうに目にとまる場所にいれば、 とっくの昔に 余がしゅうしゅうしている」
「確かに」
 裏の通り道として通った時とは違い、 今回は本格的な床下探検隊だ。
 桜子と幸真千にとっても 未知の領域に踏み入った。

「こんなところに なぜ御幣があるのだ」
「引っかき傷だらけで ボロボロになっているわ。
 どうしたのかしら。 あら、 咬み痕まで」
 痕跡から推理するまでもなく、 猫の仕業に見える。

「あちらに在るのは 鳥の羽根の残骸のようです。 やれやれ」
「だめだ。 アリとかクモとか、 じみな虫しか見あたらない」
「幸真千、 一休みしましょうよ。
 お日様を浴びて手足を伸ばしたいわ」
 そう言いながらも、 桜子は付き合いが良い。
 三人が 仲良く縁の下を這いまわっていると、 上の様子が騒がしくなった。
 ドタバタした足音に混じって
「おぐろー」
「何処に居るの。 出ていらっしゃーい」
 と呼びかわす声が聞こえる。

 内裏では もうひとつの問題が 予期せぬ方向に進展していた。
 尾黒の姿が見えなくなっていたのだ。

 食いしん坊の尾黒は、
 いつもなら 餌の時間には 真っ先に来て催促するはずなのだが、
 新月と茶帽子が食べ終わっても、
 尾黒の分だけが そっくり手も付けられずに残っている。
 心配した木五倍子が ありったけの人数を使って探したが、
 杳(よう)として行方が分からない。
 日頃は 尾黒に手を焼き、 内心うとましく思っていた女官たちさえもが
 さすがに気になるのか 一緒になって探し始め、 大捜索になっていた。

「出ましょう」
 真咲の提案に、 二人は素直に同意した。
 そろそろ飽きてきたのかもしれない。
 渡殿の近くから出ようとしたところ、 今度は 小鉢が転がっているのを見つけた。
 欠けているわけでもなく、 まだまだ使えそうなのにもったいない。
 真咲がそう思って拾い上げて見ると、 底に何かがこびりついている。

「生臭いです。 何に使ったのでしょ…… あら、 これは」
 キラキラ光る小片があった。
 端に ちらりと赤い色が見える。
 つまみ上げて見せると、 幸真千が悲鳴を上げた。

「うわぁーっ、 ミチオシエがーっ、 こんなことにーっ」



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