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馬十の辻に風が吹く 第五章―3


「………… ミチオシエ……。 それって、 もしかして 虫?」
 太保以は、 思いっきり しかめっ面だ。

「そう、 虫。
 でも ただの虫ではないぞ。 すこぶるうつくしい虫なのだ。
 ぴかぴかに光っているし、 まっかな帯までしている おしゃれさんなのだ」
「………… 悪いね。 力になれそうもない。
 それより、 そろそろ虫集めを卒業したらどうだろう。
 それが良いと思うよ。 良い機会だ」
「ミチオシエを手に入れたら考える」
 太保以は、がっかりしたようにため息をついた。
 幸真千が、 一度言い出したら めったに人の言うことを聞かない事を思い出したのだろう。
 少し離れた後ろから 様子を見ていた真咲も、 無理だろうと思っている。
 虫好きなお年頃なのだ。

 真咲の隣で 桜子からくすくすと笑い声がこぼれた。
 太保以が真咲を見て、 こちらは苦笑いだ。
「こんな子たちのお守りでは、 真咲先生も大変だ」
「楽しいお役目です。
 残念ながら 虫には詳しくないのですが、 ご一緒に勉強しようと思っています」

 そんなやり取りを気にする風もなく、
 幸真千と桜子は 太保以におねだりを始めた。
「おじうえのやしきに遊びに行きたい。 虫好きがいるはずなのだ」
「私も。 裏のお庭が、 夏や秋には どんな風になるのか見たいです」

 二人の要望に太保以は眉をひそめた。
「無理だろう。
 恒例になっている花見の宴さえ 父は止めたがっている」
 振り向いて、 真咲をじっと見つめた太保以は、
 何を思ったか 突然話題を変えた。
「葦若の宰相は、 近頃内裏から足を遠ざけているらしいですね」
「大事なお役目を賜(たまわ)られて、 お忙しくていらっしゃるのでしょう」
 真咲は 何も考えず普通に返したのだが、 太保以は 真咲から目を離さなかった。
「私なら、 こんなに魅力的な方を 一刻も放っておきたくありませんけどね。
 宰相は たいそうもてるらしいから、 余裕なのでしょうか」

 うへっ、 多万記おじさん、 東宮殿でいったい何を言いふらしたのだ。
 自分の知らないところで 変な話が進んでいなければ良いが、
 と 真咲は急に心配になった。
 どういう返事をすればいいのか分からない。
 (こらっ!  葦若。 何とかしろ)
 心の中で突っ込んでみる。
 赤くなったり青くなったり 忙しく変わる真咲の表情を見つめて、
 太保以は、 ふっ、 と小さくため息をついた。



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