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馬十の辻に風が吹く 第四章―9

「首に 吹き矢が」
 抑えた声で告げれば、 馬上に居たのは葦若で、 手綱を片手に持ち替えた。
 尚も暴れ狂う馬の背にしがみつきながら、 空いた手で 首の辺りを探り、
 吹き矢を見つけて抜くやいなや、 素早く懐にしまった。
「大丈夫だ。 落ち着け」
 馬に声を掛けながら 何とか鎮める。
 わりと近くに居た 真央土の馬丁が駆け寄ったが、
 葦若は 馬の首にしがみついて動かず、
 終着地点付近から 熱密の馬丁が何人か 慌てて駆けつけて来て、
 手慣れた様子で轡を取ったのを確かめてから、
 ようやく 馬を降りた。
 厚密の馬丁が納得しがたい表情で、 馬を引き取っていった。

「よくぞでかした。 大事ないか」
 立ち上がって声を掛けた帝のもとに、
 馬から降りた葦若は へろへろしながら歩み寄る。
「はい、 だ、大丈夫です。
 あひー、 はっ、はっ、夢中で、 ううっ、 あはーっ、 息が、 息が……」
「見事だ。 石動原の領地は 馬の産地だったな。 さすがである」
 東宮も一緒になって褒めるが、
 葦若は ハフハフするばかりで しまらない事おびただしい。
 せっかく格好良かったのが 台無しだ。
「お褒めにあずかり。 はひーっ、 はっ、はっ、…… あへふー」
 その場の緊張が一気に解けだした。
 そこかしこで 忍び笑いさえ漏れる。

 真咲は 逃げた子兎を回収して無事を確認した。
 真咲に不審の目が向く事はなかった。
 単に 恐怖で動けなくなったように見えたらしい。

 あれは何だろう。
 人心地ついて、 馬場を後にしながら 真咲は心中で首をひねった。
 熱密が 大事な商品をおとしめるはずがないから、
 おそらくは 真央土側にある人間の仕業だろう。
 死人や怪我人が出なかったから 大事にはならなかったものの、
 やり方が大雑把に過ぎる。
 目的が読めない。

 幸真千と桜子を狙った一連の事件の続きだろうか。
 葦若か砂々姫が目当ての 別口だろうか。
 それとも、 熱密馬導入に反対する単なる嫌がらせなのだろうか。
 さっぱり分からない。
 解決の糸口さえ見つからないうちに、 どんどん面倒ばかりが増えてゆく。
 華麗なる内裏を舞台に、 美しく可憐な女官の大活躍
 …… のはずが、 何故こうなる。

 まるで、 街道の辻で方向を見失った迷子のような気分だ。
 風は どっちから吹いている?


          第五章につづく


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コメント
2065: by lime on 2014/04/04 at 00:48:35 (コメント編集)

まだまだ、謎がいっぱいですね。
真咲の活躍は、もう少し先送りのようですね。
それにしても葦若の行動が、いろいろ気になります。
なんか隠してるような、演じてるような。
まだ物語は、中盤と言ったところでしょうか。
次章も楽しみにしています。

2066:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2014/04/04 at 10:51:50 (コメント編集)

ありがとうございます。
少し修正しました。
葦若が大根役者っぽかったですね。

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