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馬十の辻に風が吹く 第四章-5

「お断りいたします」

「ええっ、 そんな。 まだ何も言っていない」
「嫌な予感がします」
「ものすごく勘が良いのですね」
「そういう事ですから。 失礼します」
 真咲は 踵(きびす)を返して立ち去ろうとしたが、
 回り込まれて 行く手を遮られた。

「出来るだけ 迷惑にならないように頑張ります。
 どうしても避けられない事態に陥った時だけ 協力してください。
 お礼はします。 お望みの物はありませんか」
 一番の望みは、 役目を無事に果たすことだ。
 今は それ以外を望んではいけない。

 一瞬の沈黙を どう受け取ったものやら、
 葦若が 畳みかけるように先を続ける。
 真咲に考える余裕を与えたくないらしい。
「今すぐに思いつかなければ 後からで良いです。
 精いっぱい手を尽くしますから、 何でも遠慮なく言ってください。
 本当に ちょっとだけ協力してもらえればいいのです。
 面倒な事ではありません。
 叔父が都に来てしまったのです。
 会いたがると思いますが、 断ってください。 私も阻止します。
 万が一 会うことになってしまったら、 適当にごまかして 煙に巻いてください。
 むしろ はっきりしたことは 何も言わないでください。
 それだけです」
 一息に話し終えると、
 ねっ、 簡単でしょ、 と言わんばかりに微笑んだ。

 縁の下で盗み聞きをしていなければ、 全くの意味不明であるが、
 あいにく真咲は知っている。
 帝には なんとか断ったが、 叔父の説得が未解決ということなのだろう。
 巻き込まないで欲しいと思った。

「私でなくても良いのではありませんか。
 宰相のお願いなら 喜んで引き受ける方はいくらでもいらっしゃいますでしょう」
「あなたでなければ駄目なのです。
 あなたが良いのです」
 顔が近い。 近すぎる。

 壮絶な美形に 真顔でこんな台詞を吐かれて 断れる女が居るだろうか。
 否、 居ない。
 前後のいきさつが きれいさっぱり抜け落ちてしまった。
 不覚にも ぼうっとしてしまう。
 駄目だ。 しっかりしろ、 真咲。

 しかし 悲しいかな、 立ち直る前に丸めこまれる格好になった。
「ありがとう。 恩に着ます。 思った通り良い人だ」
 葦若は、 用事は済んだとばかりに 嬉しそうに帰って行った。
(こっちは それどころじゃないのに、 なんでこうなるかなあ。
 良い人って言われてもねえ)
 頭を抱えた時には、 葦若の姿は とっくに消えていた。

 仕方が無い。
 叔父さんに会うのを断って、 断りきれなくなったら 適当にごまかせば良いみたいだし、
 むこうは知らなくても 助けてもらった借りがある。

 それにしても、 あの美貌が凶器になるとは思わなかった。
 …… 死ぬかと思った。



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コメント
2041: by キョウ頭 on 2014/03/24 at 20:42:51

「あの美貌が凶器に…… 死ぬかと思った」
真咲も、まだまだ「オトメ」という事でしょうかw

2042:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2014/03/24 at 23:15:51 (コメント編集)

身体と技は幼い時から鍛えられていますが、心はうぶな乙女なのです。
本当は、おしゃれだってしたいお年頃なのです♪

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