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赤瑪瑙奇譚 第六章――3



 ユキアは、 迎賓館を抜け出した。
 覆面姿のユンは、 どこかで目をつけられている様子なので、
 さらに 日除け布を垂らした 笠を被った。

 春の離宮は 先日とは違い、 工事が再開され、 門も大きく開け放たれて、
 関係者と思しき者たちの出入りもある。 
 忍び込むわけには いかないようだ。 門の前で 思案していると、
「何か用かい」
 と職人が 声を掛けてきた。

「いえ、 先日通りかかった時に、 門が 厳重に閉まっていたのに 今日は 開いていたので、
 どうしたのかと見てしまいました」

「ああ、 後は 内装工事だけだから、 開けといても危険じゃなくなったんだ。
 俺は大工だから、 もう用なしだ」
「へえ、 じゃあ、 もうじき出来上がるんですね」
「そういうこと」

 仕方がない。 落とし穴の仕掛けを確かめたかったが、 無駄足だった。
 町外れの小屋を 見に行こう。
 両方を見て比べてみたかったが、 小屋のほうだけでも 調べれば 何か判るかもしれない。

 だが、 件の小屋は 完全に焼け落ちていた。
 警邏の役人が 焼跡を調べていたが、
 古びた小屋の残骸と、 穴以外には 何も残っていないらしかった。

 すっかり日が暮れてしまったので、 あわてて迎賓館に帰ろうと急いだが、
 途中の夜道は まるで人気がない。
 と、 何処かで 悲鳴が聞こえた気がした。

 その方向に向かうと、 人が倒れているのを見つけた。
 近寄るまでもなく 死んでいる。 首が 取れかかるまでに切られていた。

 見覚えがあった。 春の離宮の門前で 話しをした職人だ。
 少し言葉を交わしただけだったが、 いかにも職人らしい ざっくりとした人柄に思えた。
 こんな無残な最期を迎えるとは、 本人も 想像さえしていなかったろう。

 合掌すると、 あわただしい数人の足音が聞こえ、 明かりが近づいてきた。
 ユキアは 素早く身を隠した。
 話し声からすると、 夜警をしていた警邏の人間らしい。 後は任せて帰った。

 これで死体に出くわしたのは 二度目だ。 行く先々に 死体が現れる。
 まだ この国は 荒れているのだろうか。
 それとも 新たに不穏な事が 起ころうとしているのだろうか。
 そして 他の二国、 マサゴとモクドは どういう状態なのだろう。
 気にかかることが 次々と頭に浮かんで来た。

 遅くなってしまったから、 メドリに叱られるかもしれない と思いながら、 迎賓館に入ろうとして、
 様子がおかしいのに気がついた。

 気配を殺して うかがっていると、 なんと、 カムライとウガヤまでが居る。

「参りました。 予想もしない事ばかりが こうも立て続けに 起きるとは……。
 まさかユキア姫が、 さらわれるなど……」
 ウガヤの声だった。


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by まとめwoネタ速neo on 2012/06/19 at 01:24:17

 ユキアは、 迎賓館を抜け出した。 覆面姿のユンは、 どこかで目をつけられている様子なので、 さらに 日除け布を垂らした 笠を被った。 春の離宮は 先日とは違い、 工事が再開さ

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コメント
164: by ポール・ブリッツ on 2012/06/15 at 08:21:23

おおっ(^_^)

やってくれますねー(^_^)

ストライクゾーンど真ん中です。

これからの奪回作戦が楽しみです。

165:Re: ポール・ブリッツ様 by しのぶもじずり on 2012/06/15 at 14:30:22 (コメント編集)

んんんんんん、ご期待に添えるかどうか。
まだ前哨戦で、メインイベントではないのです。
ああ、言っちゃった。

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