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馬十の辻に風が吹く 第四章-3

 太保以が来て、 ひとしきり内裏が盛り上がった翌日の事、
 今度は 葦若が姿を見せた。

「本日は 何の会もございませんが、 ご機嫌伺いですか」
 何気に問いかけた女官に、 戸惑うように答えた。
「陛下のお召しです。
 一応参議ですから、 政治(まつりごと)の事で…… あはっ、 冗談です。
 そんなこともなさそうですね。 どんな御用でしょうか。
 う~む、 見当もつきません。 御前に出れば分かるでしょう」
 くすくす笑う女官を さらりとかわして、 白桐殿へと向かって行く。

 なんとなく気になった真咲は、 縁の下にもぐりこんで様子をうかがった。
 賀の祝いに現れた襲撃が 話題に出るかもしれない と考えたのだ。

 参内の挨拶が済むと、 帝はすぐに本題に入った。
「そなたの叔父、 多万記(たまき)から文が届いた」
 多万記は葦若の祖母と共に 石動原の領地に在って、 留守を預かっている。

 四年前、 事件への怒りが収まらなかった北山院は、
 周囲を驚かすほどの回復を見せた葦若を 後見すると言い出し、
 誰も異議を唱える暇も無く、
 烏帽子親(えぼしおや)になって 元服させてしまったことから、
 多万記の出番は すっかり無くなってしまった。

「叔父から陛下に直接ですか」
 葦若は眉をひそめた。
「うむ、 そなたを心配して、 くれぐれも頼まれてしまったようだ」
「それはまた、 面倒な事を頼まれてしまわれたものです」
「そうなのだ。 宰相にふさわしい妻を推挙してほしい と頼まれた」
 しばしの間、 沈黙が落ちた。

 話の成り行きに、 真咲は忍び込んだ事を後悔した。
 まさかこんな話だとは思っていなかったのだ。役目とは全然関係ない。
 早々に退散したかったが、 静かすぎて動けなかった。

 先に口を切ったのは 帝だ。
「熱密の砂々(ささ)姫を 妻に望んでいるという話が 多万記の耳に届いているらしい。
 それを止めて欲しい と書いてあった。
 命を助けてもらった事には感謝しているが、 それはそれ。
 野蛮な属国育ちでは 風習も違うだろうし、
 朴家に連なる石動原家の嫁として ふさわしくない。
 我が儘な姫だとの噂もあるらしい。
 身分は多少低くてもかまわないから、
 家と夫をしっかりと支えてくれるような娘があれば、
 是非 余から薦めて欲しいとあった」
「…………」

 絶句したらしい葦若の沈黙を、
 縁の下の真咲は 複雑な気持ちでうかがった。
 どうするんだろう。 続きが気になる。

「とはいえ、 しっかり者の若い娘と言うのは 近頃希少だ。
 余もあまり聞かない。 困った。
 ………… 桜子の教育係は 大層しっかり者だと言う女官が居るが
 ……どうじゃ」
「真咲先生ございますね。 はい、 なかなかしっかりなさっておいでです。
 桜子様も 幸真千様も すっかり尊敬なさっていらっしゃるご様子にございます」
 傍に控えていたらしい内侍の声が、 面白そうに答える。

 真咲は 危うく床板に頭を打ちそうになった。



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コメント
2031:これはこれは by ネット on 2014/03/20 at 21:29:39 (コメント編集)

意外な成りゆき~葦若の返事が、気になります♪

2032:Re: これはこれは by しのぶもじずり on 2014/03/21 at 11:12:06 (コメント編集)

ネット様 いらっしゃいませ。
こんなことになっています。
はてさて、どうなりますことやら。続きをお楽しみに♪

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