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馬十の辻に風が吹く 第四章―2

 そんな折、 葦若と 内裏の話題を二分するような人物が登場した。
 石切親王こと 大蔵卿の息子 太保以(おほい)である。

 帝から送られた元服祝いの返礼に やって来た太保以は、
 四年前の葦若を彷彿とさせる 凛々しい若者だった。
 女官たちの評判では、 大蔵卿の若い頃と良く似ているらしい。
 その上、 内裏に勤める母親に、 まめまめしく文を届け、 時には贈り物を届けて、
 孝行を怠らない出来た若者だ と評判が良い。

 薦める人物が居て、 帝は この機に朝廷の官位を授けようと考えていた。
 元服したばかりでもあり、 初めから高位高官というわけにもいかないが、
 それなりの官位を授ける用意もあったのだが、 太保以はそれを丁寧に辞退した。
 自分はまだ未熟故、
 東宮か 第二皇子の美穂積(みほつみ)皇子に仕えて
 研鑽(けんさん)を積みたい と願い出たのだ。
 第二皇子に仕えても、 さしたる役職が無い。
 東宮坊に加えるにしても、 丁度良さそうな地位には 空きが無い。
 少し低い官位から出発することになるが、
 それでもと望んで 許され、 東宮殿に入ることになった。

 東宮の使いで 内裏に姿を見せる機会があるだろうか、 と女官たちはかまびすしい。
 そんな事でもなければ、 親王の子といえども 高い官位を持たない元服を過ぎた者が、
 度々内裏に出入りすることは難しいのだが、
 八省の「それなり」よりは いくらか可能性が高いかもしれない。
 内裏へのお使いは 太保以様にして下さるよう、
 東宮様にお願いしようかしら と言い出す女官が出る始末になった。

 退出しようとする太保以と、
 たまたま往き会った真咲が すれ違いざまに会釈をすると、
 先方から声をかけられた。

「失礼ですが、 新たに皇女の教育係になられた先生でいらっしゃるか」
「は、はい。 真咲と申します」
「お会いできて光栄です。
 真咲先生が来てから 桜子皇女が熱心に学問に励み、
 立ち居振る舞いも落ち着いてきたと聞いています。
 私もご教授いただきたいものだ」

 桜子が勉強熱心なのは 以前からだと思う。
 落ち着いて見えるようになったのは、
 たぶん 木登りで発散しているせいだが、 褒められて悪い気はしない。
 良い人じゃないの と思った。
 きりりと男らしいし、 葦若みたいに チャラチャラしていないところも良い。
 男は こうでなくちゃ。
 一つ年下なのに しっかりしてそうだ。

「本気ですよ」
 さわやかに念を押されて、 真咲は良い気分になった。
 久しぶりに笑顔を振りまくと、 笑顔で返された。
 このまま 良い男に成長して欲しい と心から願った。
 すっかり 教育係になじんでいる真咲だった。
 


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コメント
2029: by lime on 2014/03/19 at 08:19:38 (コメント編集)

新たな凛々しき若者が登場しましたね。
でも、しのぶさんがイケメンを出しても、すんなり受け入れてはいけないような気がして、注意注意。
逆に、ある程度チャラ男が定着した葦若に、何かありそうな・・・。いや、やっぱりチャラ男なのかも?

2030:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2014/03/19 at 10:14:32 (コメント編集)

わお、イケメン注意報発令ですか。
おかしいな。イケメンをけっこう活躍させてると思うんですが。
もしかして、私の個人的な好みがおかしいのでしょうか。あれっ?
特にチャラ男が好きなわけではないんですけどね。
あははは^_^;

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