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馬十の辻に風が吹く 第三章―5


 真咲の読みは 悪い方に当たっていた。
 待ち伏せされている。

 潜んでいる男の姿を 初めに見つけた時は 野盗に見えたが、 動きや気配が違う。
 山賊か何かに思わせたいのだろうが、
 どんなに統制のとれた山賊でも 荒々しい不満や乱れがあるものだ。
 一人を見つけた後からは
 次々に四人まで見つけることができた男たちに、 そういう乱れは感じない。
 戦に臨むような緊迫感があるだけだ。
 金品を目当てにする輩とは 明らかに違っていた。 

 退治する必要はない。
 追い払えば切り抜けられる と考えていたのは、 安易だったようだ。
 真咲の武器は 短刀しかない。
 本物の山賊なら 追い散らす自信があったが、
 連中は 簡単に逃げてくれそうには見えなかった。

 襲撃を阻止する為には 戦闘能力を確実に削(そ)ぐしかないが、
 出来れば捕まえて、彼らの目的と 背後で指図をしたのが誰なのかを 聞き出したいところだ。
 四人の他にも居そうだが、 探している時間は無い。
 馬車が来る前に片づけておきたかった。
 真咲は、 ゆっくりと息を吐きだした。

 一陣の風が、 梢(こずえ)を揺らせて通り抜ける。
 その風に隠れて 突き進んだ。
 真咲のもう一つの武器は、 素早い動きだ。
 茂みにうずくまっているところを 低い体勢から近づき、
 足首の腱を切り、 利き腕の筋を狙った。
 一人を動けなくしたが、 声を上げられた。
 仲間が駆け寄って来る。
 取り囲まれることを嫌って走る。
 離れすぎないように、 敵から見えるぎりぎりを逃げ、 道から遠ざかった。
 だが 追いかけてきたのは一人。
 他は、 当初の目的を遂げようと 踏みとどまったらしい。
 これでは駄目だ。 頃合いを見計らって転進する。
 実戦には慣れている相手だ。 手加減は出来なかった。

 ようやく二人目を倒し、 気配を消さずに駆け戻った。
 二人目で手間を取りすぎた。 時間が無い。
 もうそろそろ 馬車が来てしまう。
 騒ぎを起こして、 待ち伏せに気付かせた方が良い。
 桜子たちに姿を見られる危険があったが、
 今の姿なら 眼鏡をかけた教育係とは判らないだろう。
 馬車には 護衛兵と兄多遅が付いている。
 騒ぎを知れば、 何とかするはずだ。
 全速力で逃げてくれれば 一番良い。

 真咲は、 思いっきり気合を発して突っ込んだ。
 すぐに後悔した。
 五人も居た。
 短刀一本では あまりに分が悪い。
 先ほど倒した敵の刀を 奪っておくべきだったが、 もう遅い。
 逃げ出したいが、 それはできない。 初仕事で大失敗は嫌だ。
 それよりも、 可愛い教え子と 小生意気なやんちゃ坊主を殺されるのは もっと嫌だ。
 出来る限り派手に暴れてやる!

 狙いを定めた一人に突進すれば、 相手も鋭いひと振りを浴びせかけてきた。
 刃をかわしてすり抜け、 目標を変える。
 止まったら終わりだ。
 撹乱(かくらん)しながら隙を突こうとしたが、 敵も侮れない腕だ。
 その上、 五人が連携した動きで迫って来る。
 大声を上げる余裕も無い。

 まずい。 いつ馬車が来てもおかしくない頃だ。
 何とか気付かせなくてはならない。
 走りながら 道に飛び出そうと機をうかがったが、 それも思うようにいかない。
 真咲の速さに慣れてきたのか、徐々に動きが封じられてきている。
 かわすのが精いっぱいになって来た。

「ちと尋ねたい。
 このあたりに野糞に適した茂みはないだろうか」
 死闘の真っ最中だというのに、
 美しげな公達が あらぬ問いかけをしてきた。



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